不動産担保ローンと不動産投資ローンは、混同されやすいものですが、利用目的によって違いがあります。今回は、不動産投資ローンの仕組みとメリットデメリット、おすすめの不動産投資ローンについて解説します。
不動産投資ローンとは?
不動産投資ローンとは
を言います。
区分マンション、一棟マンション、一棟アパート、一棟ビル、土地、駐車場など・・・の投資物件を購入するときに利用するローンです。「アパートローン」と呼ばれることもあります。
不動産担保ローンと不動産投資ローンは何が違うの?
違いその1.資金使途が違う
不動産投資ローンの場合
- 資金使途:投資物件・投資用地の購入資金
不動産担保ローンの場合
- 資金使途:自由
です。
不動産担保ローンは、資金使途が自由ですので、不動産担保ローンで不動産投資をすることもできます。
ただし、資金使途が自由な分、不動産担保ローンは、不動産投資ローンよりも金利が高く設定されているため、不動産投資では、低金利で資金使途が限定された「不動産投資ローン」が利用されるのです。
違いその2.金利が違う
「資金使途が限定されている」ということは、「資金使途が限定されていないローン」よりも、貸し倒れリスクが抑えられます。
何に使うのかが明確ですので、不動産投資を前提に審査をすることで精度が上がり、貸し倒れリスクを抑えることができるのです。
- 貸し倒れリスクが低い → 低金利で提供できる
- 貸し倒れリスクが高い → 高金利でしか提供できない
という違いがあるので
金利相場では
- 不動産担保ローン:5.0%~10.0%
- 不動産投資ローン:2.0%~5.0%
となっています。
違いその3.審査が違う
前述した通りで
- 不動産担保ローン:資金使途自由
- 不動産投資ローン:不動産投資のための資金
という違いがあります。
不動産投資ローンは、利用目的が「不動産投資」ですので・・・
が重要になってきます。
不動産担保ローンの審査で重要になるのは
- 物件の担保価値(いくらで売れるのか?)
不動産投資ローンの審査で重要になるのは
- 物件の収益性(どのくらいの利回りで運用できるのか?)
- 収益の安定性(空室リスクが多いか?少ないか?)
という違いが出てくるのです。
違いその4.審査時の物件の所有者が違う
不動産担保ローンの場合は
- 借りる方が保有している不動産を審査して、融資を行います。
不動産投資ローンの場合は
- 投資家が購入予定の不動産を審査して、融資を行います。
不動産投資ローンの審査対象は「購入予定物件」なのです。
不動産投資ローンを利用して不動産投資をするメリット
メリットその1.レバレッジが利く
都内の区分マンションで不動産投資を検討する場合
物件A
- 物件購入価格:1,000万円
- 利回り:5.0%
物件B
- 物件購入価格:5,000万円
- 利回り:5.0%
という同じ利回りの物件があった場合に
自己資金が1000万円の方が不動産投資ローンを利用せずに物件Bで不動産投資をすると
年間収益:1,000万円 × 5.0% = 50万円
となります。
元手の1,000万円を回収するためには20年かかります。
自己資金1000万円を頭金として、不動産投資ローン金利2.5%で4000万円を借入をして、物件Aで不動産投資をすると
年間収益:5,000万円 × 5.0% - 4,000万円 × 2.5%= 150万円
となります。
元手の1,000万円を回収するためには6年8カ月かかります。
後者の不動産投資ローンを利用した方がレバレッジが利くため、元手の回収は3分の1の期間でできるのです。
元手の回収期間が短くなれば、回収後に他の物件に投資をすれば、さらにレバレッジが効くことになります。
メリットその2.少ない自己資金で投資をはじめられる
不動産投資ローンを利用すれば、自己資金は10%~20%に抑えられます。
1億円の物件を購入したい場合には、1000万円貯めれば不動産投資がはじめられるのです。
自己資金で投資するよりも、不動産投資をするまでのスピードが早くなるのです。
不動産投資ローンを利用して不動産投資をするデメリット
デメリットその1.返済できなければ不動産を失う
これは不動産担保ローンも同じですが、不動産投資ローンは投資物件を担保にした「借金」ですので、返済が滞ったりすれば、不動産は債権者に競売にかけられてしまい、不動産を失うことになってしまいます。
デメリットその2.空室リスクが大きくなる
自己資金だけで不動産投資をする場合は、空室が発生したとしても、収入がなくなるだけで済みます。
しかし、不動産投資ローンを利用して不動産投資をする場合には、空室が発生して収入がゼロになっても、ローンの返済はしなければならなりません。
「空室時は赤字」という状態になってしまいます。
デメリットその3.売却しても残債が残る可能性がある
自己資金:1,000万円
不動産投資ローンの借入:4,000万円
で5,000万円の不動産を購入した場合
- 5,000万円以上で売却できれば、キャピタルゲインが得られますし
- 4,000万円以上で売却できれば、残債が残るということはありません。
しかし、
- 3,000万円でしか売却できなかった。
- 2,000万円でしか売却できなかった。
となると、ローンの返済が進んでいたとしても、
となってしまい、不動産投資ローンの残債を、売却後も抱えなければならなくなってしまうのです。
不動産投資ローンの金利比較
不動産投資ローンはどのくらいの金利が適用されるのでしょうか?
代表的な不動産投資ローンを見てみます。
SMBC信託銀行プレスティア/不動産投資ローン
- 限度額:最大1億円まで
- 借入期間:最長30年
- 事務手数料:15.5万円(税込)
金利(2018年9月時点の金利)
金利期間タイプ | 基準金利 | プレスティアゴールドプレミアム またはご契約金額1億円 |
プレスティアゴールドまたは ご契約金額5,000万円以上 |
---|---|---|---|
固定金利型1年型 | 年3.13% | 年1.73% | 年1.93% |
固定金利型3年型 | 年3.35% | 年1.95% | 年2.15% |
固定金利型5年型 | 年3.45% | 年2.05% | 年2.25% |
固定金利型7年型 | 年3.65% | 年2.35% | 年2.55% |
固定金利型10年型 | 年3.10% | 年1.80% | 年2.00% |
オリックス銀行/不動産投資ローン
- 限度額:最大2億円まで
- 借入期間:最長35年
- 事務手数料:借入額の1.1%(税込)
金利(2018年9月時点の金利)
固定金利期間特約付変動金利型
3年固定特約型
《投資セレクト金利》:年2.300%
店頭表示金利:年3.300%
5年固定特約型
《投資セレクト金利》:年2.500%
店頭表示金利:年3.500%
変動金利型
《投資セレクト金利》:年2.675%
店頭表示金利:年3.675%
みずほ銀行/みずほアパートローン(一般融資口)
- 限度額:最大5億円まで
- 借入期間:最長35年
- 事務手数料:無料
金利(2018年9月時点の金利)
みずほ銀行の店頭でお知らせ
三井住友信託銀行/アパートローン
- 限度額:最大3億円まで
- 借入期間:最長35年
- 事務手数料:7.5.5万円(税込)
金利(2018年9月時点の金利)
金利プラン | 店頭表示金利 |
---|---|
変動プラン | 年2.575% |
固定プラン3年 | 年3.05% |
固定プラン5年 | 年3.05% |
固定プラン10年 | 年3.25% |
上限プラン※15年 | 年2.925% |
上限プラン※110年 | 年2.925% |
三井住友銀行/直担アパートローン
- 限度額:担保物件による
- 借入期間:最長35年
- 事務手数料:11万円(税込)
金利(2018年9月時点の金利)
三井住友銀行の店頭でお知らせ
日本政策金融公庫/普通貸付ほか
- 限度額:4,800万円
- 借入期間:最長10年
- 事務手数料:無料
金利(2018年9月時点の金利)
担保を提供する融資を希望される方
基準利率
1.16%~2.35%
と、多くの不動産担保ローンで
アパートローンの金利と不動産担保ローンの金利を比較すると、大分低金利であることがわかります。
ちなみに「変動金利」「固定金利」というのは
- 変動金利:金利が低金利だが、金利が上昇する可能性がある
- 固定金利:金利が変動金利よりも高金利だが、金利が上昇する可能性はない
※一定期間限定の固定金利の場合は、固定期間終了後金利は上昇する可能性があります。
という特徴があります。
金利タイプの違いにも、注目して不動産投資ローンを比較検討する必要があります。
不動産投資ローンの審査基準
不動産投資ローンの審査はどのように審査が行われるのでしょうか?
審査基準その1.物件の収益性
物件の収益性は不動産投資ローンでは、非常に重要な審査要件となります。
でなければ、返済原資が不動産投資の家賃から捻出できません。
融資金利:3%
不動産投資の利回り:3%
→ 審査は通らない可能性が高い
融資金利:3%
不動産投資の利回り:6%
→ 審査は通る可能性が高い
融資金利:3%
不動産投資の利回り:9%
→ 審査は通る可能性がとても高い
となります。
で表せるので「実質利回り」が高いか、安いかで収益性を評価することになります。
ただし、いくら「実質利回り」が高くても、辺境地で「空室リスク」が大きければ意味がありません。
不動産投資ローンの審査では
- 「実質利回り」の高さ
- 「空室リスク」の低さ
の2つの要素で、「物件の収益性」を評価し、審査をするのです。
審査基準その2.物件の資産価値
不動産投資ローンも、購入する不動産を担保にする「不動産担保ローン」の一種です。
万が一、返済が滞った場合には、金融機関は、担保である不動産を売却して回収するのですから、担保にする物件の担保価値が重要になります。
審査基準その3.借りる方の属性・信用力
個人の方が不動産投資ローンを利用する場合に重要になるのは「属性」「信用力」です。
金融機関は
を重視します。
万が一、不動産投資が上手く行かなくなっても、回収するために「給与」をあてにしているのです。
つまり、
- 企業規模が大きい
- 年収が多い
- 勤続年数が長い
- 役職が高い
- 貯金額が多い
などの要素が、不動産投資ローンの審査にも影響してくるのです。
不動産投資ローンの審査と金利の関係
不動産投資ローンの場合は
- 審査が厳しければ厳しいほど、金利が低金利
- 審査が甘ければまあいほど、金利が高金利
という関係にあります。
一般的に「審査厳しい」「金利が低金利」の不動産投資ローンは
- メガバンク
- 信託銀行
- 地方銀行
- ネット銀行
- 信用金庫
- ノンバンク
- 日本政策金融公庫
という順番になります。
ということは「審査が甘い」「金利が高金利」の不動産投資ローンは
- ノンバンク
- 信用金庫
- ネット銀行
- 地方銀行
- 信託銀行
- メガバンク
- 日本政策金融公庫
と逆になるのです。
例外は
日本政策金融公庫
です。
日本政策金融公庫は、政府系金融機関ですので起業する方や事業をする方に「低金利」で積極的に融資をしています。限度額が小さいものの、不動産投資ローンとしても利用できるのです。
日本政策金融公庫は
- 金利が低金利
- 審査が甘い
- 融資限度額が小さい
という特徴がある融資制度です。
まとめ
不動産投資ローンとは
- 不動産投資に使う資金を借り入れるためのローンのこと
を言います。
不動産担保ローンと不動産投資ローンの違いは
- 違いその1.資金使途が違う
- 違いその2.金利が違う
- 違いその3.審査が違う
- 違いその4.審査時の物件の所有者が違う
です。
不動産投資ローンを利用して不動産投資をするメリット
- メリットその1.レバレッジが利く
- メリットその2.少ない自己資金で投資をはじめられる
不動産投資ローンを利用して不動産投資をするデメリット
- デメリットその1.返済できなければ不動産を失う
- デメリットその2.空室リスクが大きくなる
- デメリットその3.売却しても残債が残る可能性がある
不動産投資ローン審査では
- 審査基準その1.物件の収益性
- 審査基準その2.物件の資産価値
- 審査基準その3.借りる方の属性・信用力
を中心に審査が行われます。
「不動産担保ローンと不動産投資ローンの違いを教えてください。」
「おすすめの不動産投資ローンを教えてください。」
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