不動産担保ローンの審査の甘い、厳しいという基準について、疑問をお持ちの方も少なくありません。今回は「審査の甘い不動産担保ローンの条件」と「審査の甘い不動産担保ローンの見極め方」について解説します。
不動産担保ローン審査の仕組み
不動産担保ローンの審査では大きく分けて2つの基準で審査が行われます。
- 不動産担保の担保価値
- 借りる方の信用力
の2つです。
不動産担保ローンは無担保ローンであるカードローンやビジネスローンと比較すると審査が甘いローン商品ですが、その理由はずばり「担保があること」に尽きます。
お金を貸した金融機関は、万が一返済が滞ったとしても、担保を売却すれば融資額の全額、または一部を回収することができます。
その分、貸し倒れリスクは少なく、「貸し倒れ」が発生したとしても少額の損失で済むため、無担保ローンよりも審査が甘いのです。
「担保があるなら、借りる方の信用力は関係ないのでは?」
関係あります。
なぜならば、あくまでも不動産担保ローンで借りたお金を返済する返済財源はその人の「給料やその他の収入」だからです。
担保を前提にしたローンではありますが、「担保の売却による回収」は最悪の自体(返済ができない状態)が発生したときにはじめて選択する最終手段であり、返済が正常に継続されるのであれば、「担保の売却による回収」の出番はないのです。
有担保ローンであっても、返済財源の基本は「給料やその他の収入」なのですから
個人の場合
- 勤続年数
- 給与所得
- その他の所得
- 返済負担率(収入に対するローン返済額の割合)
法人の場合
- 事業歴
- 自己資本比率
- 経常利益率
- フリーキャッシュフロー
- 返済負担率(収入に対するローン返済額の割合)
などが審査では重視されるのです。
審査の甘い不動産担保ローンの見極め方
その1.中小のノンバンクの方が審査は甘い
金利や審査が全く関係ないのであれば
- 都市銀行(メガバンク)の不動産担保ローン
- 信託銀行の不動産担保ローン
- ネット銀行の不動産担保ローン
- 地方銀行の不動産担保ローン
- 大手ンバンクの不動産担保ローン
- 中堅ノンバンクの不動産担保ローン
- 中小ノンバンクの不動産担保ローン
という不動産担保ローンのラインナップがある場合は
多くの方は
- 都市銀行(メガバンク)の不動産担保ローン
を選ぶのではないでしょうか。
どんな方、会社でも同じですが
信頼できる銀行の方が良い
のです。
しかし、「審査が通らない」という事情があるからこそ、
- 信託銀行、ネット銀行、地方銀行の不動産担保ローン
が選択肢になったり
そこに申込んでも審査に落ちてしまって
- ノンバンクの不動産担保ローン
が選択肢になったりするのです。
基本的には
- 都市銀行(メガバンク)の不動産担保ローン
- 信託銀行の不動産担保ローン
- ネット銀行の不動産担保ローン
- 地方銀行の不動産担保ローン
- 大手ンバンクの不動産担保ローン
- 中堅ノンバンクの不動産担保ローン
- 中小ノンバンクの不動産担保ローン
この順番で、上から下に優先度が下がっていくものなのです。
一番下の「中小ノンバンクの不動産担保ローン」を選ぶ方は、上位の不動産担保ローン審査で断られた方ばかりになります。
融資をしなければ中小ノンバンクの売上は増えませんから、信用力が低い方しかいない中で選ぶ必要性に迫られます。
そうなると当然、審査基準というのは下がり、審査は甘くなるのです。
一方で「都市銀行(メガバンク)の不動産担保ローン」は申込む方の信用力が高い方が多いので、比較的審査を厳しくしても、融資先を確保できるのです。
当然、審査基準は厳しく設定できます。
その2.金利が高い不動産担保ローンの方が審査は甘い
「金利」は、「貸し倒れリスク(貸し倒れ率)」と反比例の関係にあります。
100社に100万円貸して5社が倒産した場合
- 貸し倒れ率:5.0% → 損失は、5社 × 100万円 = 500万円
- 金利が年率:5.0% → 利益は、1億円 × 5.0% = 500万円
という計算になります。
この貸し倒れ率に対して、金融機関の利益を上乗せして、予想される貸し倒れ率が5.0%なら、年率8.0%で貸せば、金融機関には年率3.0%の利益が出るという計算になります。
つまり
- 金利が高い → 許容できる貸し倒れ率が高い
- 金利が低い → 許容できる貸し倒れ率が低い
ことを意味するのです。
審査が関係ない、どの不動産担保ローンの審査でも通るというのであれば
- 低金利の不動産担保ローンの方が良い
のは間違えありませんが
「審査の甘い不動産担保ローン」という基準で比較するのであれば
高金利の不動産担保ローンの方が審査が甘い可能性が高い
となるのです。
その3.不動産担保ローン専門会社は審査が甘い
ノンバンクの不動産担保ローンといっても、
- 個人向けのカードローンやフリーローンを扱っている会社
- 法人向けのビジネスローンを扱っている会社
- 不動産担保ローンだけを提供している会社
- 不動産担保ローンの提供と不動産売買をしている会社
・・・
と色々な事業形態があります。
ここで注目すべきは
です。
不動産担保ローンの専門会社は
不動産担保ローン案件だけを扱うので審査の精度が高い
→ ギリギリの貸し倒れ率を見極められる分 = 審査が甘い
不動産売買をしているところが多く、担保価値の算定、売却の算段が付きやすい
→ 担保を換金する手法を持っている分担保の評価が高い = 審査が甘い
専門だからこそ、不動産担保ローンで融資件数が増やす必要がある
→ 不動産担保ローンだけで売上を作る必要があるため = 審査が甘い
傾向があるのです。
不動産担保ローン専門会社は
- 融資実績が豊富
- 担保の査定が正確にできる
- 担保の売却の手段を保有している
- 不動産担保ローンで融資件数を積み上げることが必須
という状況にあるため、審査が甘くなる可能性が高いのです。
あくまでも、ローン商品のラインナップの一つとして不動産担保ローンを取り扱っているノンバンクの場合は
- 不動産担保ローンの融資実績が少ない
- 不動産の担保価値査定のノウハウが薄い
- 売上の手段は別のローン商品でも良い
- 担保を売却する時は、第三者の不動産会社に依頼する必要がある(自社では倍伽kできない)
という状況になる分、ギリギリのラインでの審査ができないので、比較的審査基準のハードルを上げて、貸し倒れ率のバッファー(余裕を持つこと)を厚めに取るのです。
この審査基準の違いは「掛目(かけめ)」の設定を見てもあきらかですが
- 不動産担保ローン専門会社:掛目70%~110%
- ノンバンク:掛目70%~80%
- 銀行:掛目70%
と設定されていることが多く、不動産担保ローン専門会社は掛目も手厚く設定されているのです。ここからも審査が甘いことが推察されます。
その4.事務手数料が高いところは審査が甘い
不動産担保ローンの場合は、無担保ローンのカードローンやビジネスローンとは異なり、事務手数料が発生するものがすくなくありません。
事務手数料の相場
- 10万円
- 融資額の0.0%~5.0%(平均は、融資額の2.0%)
となっていますから、融資額が1000万円なら、それだけで50万円もの事務手数料が発生するのです。
「0.0%~5.0%」という幅があるのは「事務手数料+金利」の合計が
利息制限法を超えてはいけないので
- 元本10万円未満 → 金利上限20.0%
- 元本10万円~100万円未満 → 金利上限18.0%
- 元本100万円~ → 金利上限15.0%
金利が高いときは事務手数料が0円に近づく仕組みになっています。
事務手数料は金融機関からすると少しずつ積み上がる「利息収入」とは違って、契約時に発生する「売上」ですから、重要度の高いものなのです。
だからこそ、事務手数料の設定が高い不動産担保ローンほど審査が甘く設定されているのです。
その5.不動産投資のための借入ならアパートローンの方が審査は通りやすい
不動産担保ローンは使途自由のローンですが、アパートローンは賃貸物件の建設、購入、リフォーム、借り換え資金にのみ利用できるローンです。
賃貸物件の建設、購入、リフォーム、借り換えを目的として不動産担保ローンを検討しているのであれば、アパートローンに切りかえることで審査を通りやすくできる可能性があります。
審査の甘い不動産担保ローンを選ぶときの注意点
闇金業者に注意が必要!
- 中小レベルの不動産担保ローン
- 金利が高い
- 事務手数料が高い
・・・
と審査の甘さを重視して不動産担保ローンを比較していると、闇金業者の不動産担保ローンにたどり着いてしまう可能性もゼロではありません。
とは言っても、闇金業者は担保の査定能力がないので、あまり不動産担保ローンで営業をすることはないのですが、ゼロではないのです。
闇金業者かどうかを見破るためには
登録番号の確認をする必要があります。
貸金業で営業活動をするためには「都道府県知事」or「財務局長」の登録番号が必須です。これがウェブサイト上に掲載されていないノンバンクには注意が必要です。
掲載されていても、更新の有無にも注意しましょう。
登録番号は「〇〇財務局長(〇)第〇〇〇〇〇号」となっていて、(〇)が3年ごとの更新回数を意味します。
- 1年目~3年目は(1)
- 4年目~6年目は(2)
- 7年目~9年目は(3)
となります。
この番号が大きければ大きいほど、何度も監督官庁に更新でチェックを受けている優良業者ということになります。(1)の場合は登録はしていても、更新した経験がなく、初回の登録のみです。営業活動をしていない初回登録のみの(1)には注意が必要なのです。
この番号自体が偽物である可能性もあるので金融庁のウェブサイトで業者名と番号の登録状況を確認する必要があります。
さらに日本貸金業協会の登録情報も検索します。
「日本貸金業協会に登録していない = 闇金」ではないのですが、中小規模のノンバンクでも、優良業者であれば日本貸金業協会に加盟しているものです。
また、利息制限法の金利を超えた金利が提示された場合には闇金業者と疑った方が良いはずです。
利息制限法
- 元本10万円未満 → 金利上限20.0%
- 元本10万円~100万円未満 → 金利上限18.0%
- 元本100万円~ → 金利上限15.0%
審査の甘い不動産担保ローンの審査にも落ちた場合の対策
不動産売却や無担保ローンも視野に入れる必要がある
審査の甘い不動産担保ローン3社以上に申込んで、全滅という状況であれば
- 不動産担保にまったく価値がない
- 申込者の信用情報に問題がある
- 申込者の信用力に問題がある
のどれかと言っていいでしょう。
不動産担保にまったく価値がない
田舎の土地など全く買い手がいないような土地の場合は、不動産担保の価値が0円ということも考えられます。
不動産担保ローンなのですから、担保価値が0円なら審査は通らないのです。
対策
この場合は、逆に無担保ローン(カードローンやビジネスローン)の方がまだ審査に通る可能性があります。
無担保ローン(カードローンやビジネスローン)に申込むことをおすすめします。
申込者の信用情報に問題がある
信用情報というのは
を言います。
銀行Aで返済を遅延していた場合、銀行Bにも、その情報はばれているのです。
- 現在の借入の返済で返済遅延が年に2回以上ある
- 61日以上の返済遅延がある
- 債務整理をした
- 自己破産をした
- 保証会社が代位弁済をした
という情報は返済事故と呼ばれるものであり、この情報が信用情報に記載されているとどの金融機関に申込んでも、不動産担保ローンの審査は通らない可能性が高いのです。
対策
この場合は、信用情報から事故情報が消えるまで待つ必要があります。これがあると無担保ローンも、融資も、審査は通らないのです。
基本的に、信用情報の事故情報は、契約終了後5年が経過すると抹消されます。
信用情報の事故情報が抹消されてから申し込めば、それが原因で審査落ちすることはありません。
申込者の信用力に問題がある
申込者の信用力に関する審査と言うのは
- 勤続年数
- 返済負担率
- 他社借入件数
- 他社借入総額
・・・
などがあります。
- 勤続年数が半年未満である
- 他社での借入が4社以上ある
- 返済負担率が50%を超えている
など、金融機関が設定した審査基準を超えてしまっている場合には不動産担保ローン審査に落ちてしまう可能性が高いのです。
審査落ちの理由は開示されないため、この場合は原因の特定が難しいというデメリットがあります。
対策
この場合は、不動産を売却して資金化するという手段も検討するべきです。借りるという方法は信用力の問題で難しいのであれば「売却して資金調達をする」という選択も間違えではありません。
不動産の売却であれば、信用力は関係ありません。価値がある物件で買う人がいれば売れるのです。
不動産査定はこちら
不動産リースバックはこちら
まとめ
審査の甘い不動産担保ローンの見極め方には
- 中小規模のノンバンクを選ぶ
- 金利高い不動産担保ローンを選ぶ
- 不動産担保ローン専門会社を選ぶ
- 事務手数料が高い不動産担保ローンを選ぶ
- 不動産投資目的ならアパートローンに切りかえる
という方法があります。
本当に必要ことは、資産を減少させる問題を把握し、的確にリスクを回避することが大切です。
得意分野 | 住宅ローン相談、家計相談、ライフプランニング、教育資金相談、老後資金相談、資産運用相談、相続相談 |
---|---|
資格 | 1級FP技能士、CFP®、宅地建物取引士、測量士補、貸金業務取扱主任者、土地活用プランナー、住宅ローンアドバイザー |
営業範囲 | 埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県、群馬県(メール&TEL相談は全国対応可) |
対応業務 | 相談、執筆、講師、講演 |
「審査項目のどんな違いが審査の難易度・甘さに影響してくるの?」
「他の不動産担保ローン審査に落ちてしまったんだけど・・・」