今回は、不動産を利用して資金調達する、不動産担保ローンとは違った商品「不動産リースバック」について解説します。
不動産リースバックとは?
不動産リースバックとは
を言います。
不動産リースバックの仕組み
- 【利用者】何らかの事情で急にお金が必要になった。
- 【利用者】マイホームを売却(所有権の移転)
- 【不動産リースバック業者】購入代金を支払
- 【利用者】購入代金を得る(まとまった資金を得る)
- 【不動産リースバック業者】利用者に購入した物件を賃貸として貸す
- 【利用者】毎月、家賃(リース料)を不動産リースバック業者に支払う。
解説
不動産リースバックは、
「ただ、どうしても、今の家に住み続けたい。」
という2つのニーズを持った方の選択肢です。
不動産リースバックでは
- マイホームを不動産リースバック業者に売却します。
- 売却するので、不動産リースバック業者に所有権は移ります。
- 売却ですので、売却額は不動産リースバック業者から、不動産リースバックの利用者、つまり「売却した方」に支払われます。
ここまでは、通常の不動産売却と同じですが、不動産リースバックの場合は、ここからが違います。
不動産リースバック業者は、購入資金を支払、所有権を得た物件を、不動産リースバックの利用者に賃貸で貸すのです。不動産リースバックの利用者は、家賃(リース料)を不動産リースバック業者に毎月支払うことになります。
家賃(リース料)の支払いが発生しますが、自宅を売却して、まとまった資金を得ることができるのです。
どんなときに不動産リースバックが活躍するのか?
不動産リースバックが活躍するシチュエーション
シチュエーションその1.借金返済で不動産リースバック
- 「カードローンの返済が苦しい。」
- 「住宅ローンの返済が苦しい。」
- 「会社経営が失敗して、借金が残ってしまった。」
- 「保証人になってしまい、借金を背負ってしまった。」
・・・
借金は早めに完済しなければ、利息が膨らんでしまうものです。
- 「自宅を売却して、借金を返済したい。」
という考えに至るのは当然なのですが
- 「自宅を売却したら、近所の人に何て噂されるかわからない。」
- 「子供が近所の小学校や中学校に通っているので、離れるわけにはいかない。」
- 「思い出のあるこの家を手放したくない。」
・・・
という状況が起こりやすいのです。
この状況で不動産リースバックを利用すれば
シチュエーションその2.老後資金のために不動産リースバック
- 「年金だけで毎月の生活費が不足している。」
- 「老後の生活を充実させるために旅行に行きたい。」
- 「病院に行く医療費が足らない。」
- 「家を相続してくれる人がいない。」
- 「子供や孫などに相続する必要がない。」
- 「頑張って購入した自宅だから、相続をせずに売却資金で充実した老後生活を送りたい。」
・・・
シチュエーションその3.まとまった資金が必要な時に不動産リースバック
- 「会社を立ち上げるのに起業資金が必要」
- 「インプラントや美容整形など自由診療の治療を受ける資金が必要」
- 「子供の学費が必要」
・・・
シチュエーションその4.相続税の支払に不動産リースバック
- 「相続税が払えないが、まだ母親が健在だから、自宅を売るわけにはいかない。」
相続税は、10カ月以内に納税しなければなりません。しかし、土地や自宅などの評価額が大きい場合は、納税の現金がなく、自宅や土地を売却しなければなりません。
しかし、まだその家に妻(夫)が暮らしている場合は、売却するわけにも行きません。
シチュエーションその5.会社の自社ビルをリースバック
会社が自社ビルを保有している場合、景気が良いときは収益がローン返済を上回るため、全く問題ありませんが
- 会社が業績が落ちてきた。
- 会社の引っ越し費用もバカにならない。
- 工場が近くにあるから移転できない。
・・・
というようなケースでは、持ち家ではありませんが、リースバックの選択肢が出てくるのです。
不動産リースバックのメリット
メリットその1.売却するのでまとまった資金が手に入る!
不動産リースバックは「自宅を売却する」形になります。
不動産を売却するのですから、数千万円、数百万円のそれなりにまとまった金額が一括で受け取れます。
一括でまとまった資金が手に入るので
- 生活資金
- 借金返済
- 高額な買い物
- 高額な医療費
- 納税資金
- 事業資金
- 教育資金
・・・
など、いろいろな用途に資金を活用することができるのです。
資金使途は自由です。
メリットその2.「買い戻し」ができる!
不動産リースバックは「売っておしまい」ではありません。
- 家賃(リース料)を支払って住み続ける
- 住み続けるのをあきらめて退去する
- 買戻して、もう一度所有する
という選択肢があるのです。
通常の不動産売却で、家を売ってしまうと、第三者の手に渡ってしまい、買い戻すことはほとんどできなくなってしまいます。
しかし、不動産リースバックであれば、将来の買戻し前提で、一時的に資金調達することができるのです。
メリットその3.誰にも知られない!
不動産売却で自宅を売却した場合には
近所の方に売却した事実がバレる可能性が出てきます。
売却のときは
- 近所の不動産屋に掲示されたり
- 不動産のウェブサイトに掲載されたり
- 近所の電柱に貼られたり
・・・
買い手を募集するために、近所を中心に広告宣伝されてしまいます。
当然、売却後に引っ越したとしたら、「持ち家を売ったのかしらね。」と感づかれてしまうのです。
近所の方がそれを見てしまえば、「自宅を売却して家計が苦しいのかも」と勘繰られて、噂されてしまうリスクもあるのです。
メリットその4.固定資産税が不要
自宅は所有しなくなるので、固定資産税は支払う必要がなくなります。
メリットその5.火災保険も安くなる
所有しているときに加入する火災保険は解約して構いませんので、賃貸住宅としての火災保険(家財保険)の加入になります。
火災保険料も安くなります。
メリットその6.ローン審査が不要
あくまでも、不動産リースバックは「不動産売却」ですので、ローンのような信用情報の審査は必要ありません。
- 債務整理・自己破産の経験をしている
- 返済事故を起こしている
- 数社から借金をしている
・・・
という通常はローンが組めない属性の方でも、不動産リースバックは利用できる可能性が高いのです。
当然、保証人なども不要です。
不動産リースバックのデメリット
デメリットその1.通常の不動産売却よりも、売却額は安くなる可能性が高い
不動産リースバックは通常の不動産売却と比較して、売却額が低くなる傾向があります。
不動産リースバック業者は
- 自由に所有した物件を売却できない
- 不特定多数の方に物件を賃貸の募集ができない
- 「買い戻し」依頼に対応しなければならない
・・・
ちなみに査定額を低く設定すればするほど、「買い戻し」のハードルは低くなります。
「少しでも高く売りたい。」
というのであれば、不動産リースバックよりも、通常の不動産売却の方が向いているのです。
デメリットその2.通常の賃貸物件よりも、家賃(リース料)が高くなる可能性が高い
不動産リースバック業者は
- 不特定多数の方に物件を賃貸の募集ができません。
- 「買い戻し」依頼に対応しなければならない
・・・
と、賃貸物件の運用面でも、制限があるのです。
また、不動産リースバックの家賃(リース料)というのは
- 売却額が高ければ高いほど → 不動産リースバックの家賃(リース料)が高い
- 売却額が低ければ低いほど → 不動産リースバックの家賃(リース料)が低い
関係にあります。
家賃のことだけを考えたら、不動産売却で高額な資金を手に入れた上で、別の賃貸物件に住む方が安上がりになります。
デメリットその3.不動産リースバックを提供している業者が少ない
「不動産リースバック」というのは、ここ2年~3年で伸びてきた不動産売却の新しい形です。
不動産リースバックを利用する注意点
住宅ローン残債よりも、自宅の売却価格(査定価格)が低かったら利用できない!
不動産売買でも同じですが
の状態でないと、売却が成立しません。債権者である銀行が売却にOKを出さないからです。
「借金」の方が「資産価値」よりも大きい状態だからです。
住宅ローンを利用している場合に、十数年返済を継続していれば
と思ってしまいがちなのですが、
実際に計算してみると、
- 思った以上に住宅ローンの元本が減っていない
- 思った以上に物件の価値が下がっている
- 新築物件で購入していれば、新築のプレミアムは剥がれてしまっている
・・・
などの問題から、
というケースが少なくないのです。
この場合は、いくら不動産リースバックを利用したくても、断られてしまうのです。
安定した収入が必要!
不動産リースバックは、ローンではありません。
そのため、ローンのような審査は発生しません。
賃貸物件を借りる時の審査のようなものです。
- 給与収入でも、
- アルバイト収入でも、
- 年金収入でも、
- 生活保護でも、
・・・
構いませんが
- 安定した収入があること
- 毎月の家賃(リース料)が無理なく払える収入であること
が不動産リースバックを利用する条件となっているのです。
不動産所有者全員の同意が必要
不動産リースバックは、不動産を一旦売却する仕組みですので
不動産所有者(名義人)全員の同意が必要なのです。
単独名義であれば、その人の判断でリースバックは利用できますが、共有名義の物件の場合は、名義人全員の同意が必要なのです。
返済遅延があり、差し押さえされている場合には不動産リースバックは利用できない
住宅ローンの支払を滞納してしまって
- 任意売却
- 競売
になってしまう、という状況下では、不動産リースバックは利用できない可能性が高いです。
支払が滞納されている状況では、債権者(銀行や保証会社)は、できるだけ債権を回収しなければなりません。
少しでも、高く売れる「任意売却」「競売」は良くても、安くしか売れない「不動産リースバック」は選択肢に入らないのです。
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まとめ
不動産リースバックとは
- マイホームを売却して、売却代金を受け取ったうえで、そのマイホームに家賃を支払って住み続ける仕組みのこと
を言います。
不動産リースバックの仕組み
- 【利用者】何らかの事情で急にお金が必要になった。
- 【利用者】マイホームを売却(所有権の移転)
- 【不動産リースバック業者】購入代金を支払
- 【利用者】購入代金を得る(まとまった資金を得る)
- 【不動産リースバック業者】利用者に購入した物件を賃貸として貸す
- 【利用者】毎月、家賃(リース料)を不動産リースバック業者に支払う。
不動産リースバックが活躍するシチュエーションは
- シチュエーションその1.借金返済で不動産リースバック
- シチュエーションその2.老後資金のために不動産リースバック
- シチュエーションその3.まとまった資金が必要な時に不動産リースバック
- シチュエーションその4.相続税の支払に不動産リースバック
- シチュエーションその5.会社の自社ビルをリースバック
等があります。
不動産リースバックのメリット
- メリットその1.売却するのでまとまった資金が手に入る!
- メリットその2.「買い戻し」ができる!
- メリットその3.誰にも知られない!
- メリットその4.固定資産税が不要
- メリットその5.火災保険も安くなる
- メリットその6.ローン審査が不要
不動産リースバックのデメリット
- デメリットその1.通常の不動産売却よりも、売却額は安くなる可能性が高い
- デメリットその2.通常の賃貸物件よりも、家賃(リース料)が高くなる可能性が高い
- デメリットその3.不動産リースバックを提供している業者が少ない
「不動産リースバックのメリットデメリットを知りたい。」