持ち家を持っている方がまとまった資金が必要になった場合に、選べる選択肢の主なものとして「リースバック」と「不動産売却(一般売却)」があります。今回は、持ち家のリースバックと不動産売却の同じ部分、違う部分をメリットデメリットを含めて比較していきます。
持ち家のリースバックと不動産売却の仕組み
リースバックの仕組み
リースバックとは?
を言います。
ご自宅を売却しながらも、売却後も住み続けられるのが「リースバック」です。
- リースバック業者に売却することで → 売却代金が入手できる
- リースバック業者から元ご自宅を賃貸物件として借りることで → 家賃を支払う必要が出てくる
という仕組みになっており
売却時点での物件(ご自宅)の評価額の7割前後の売却代金
を手に入れることができます。
不動産売却(一般売却)とは?
持ち家を不動産業者に依頼して、不動産取引市場に出し、買い手を見つけて売却すること
を言います。
不動産業者(不動産仲介業者)は、売却希望の物件の情報を集めて、不動産ポータルサイト(HOMES、SUUMO、アットホーム)や不動産流通機構(レインズ)などに情報を掲載し、購入希望者(もしくは買い手側の不動産仲介業者)を見つけて、価格交渉・条件交渉を行い、契約の上、売却を行うのです。
不動産業者との契約方法には、3種類の方法があります。
- 専属専任媒介契約:不動産業者1社にだけ仲介を依頼する契約方法、自分で買い手を見つけることは不可
- 専任媒介契約:不動産業者1社にだけ仲介を依頼する契約方法、自分で買い手を見つけることは可
- 一般媒介契約:複数の不動産業者に仲介を依頼することができる契約方法、自分で買い手を見つけることは可
持ち家のリースバックと不動産売却の同じ点
1.持ち家を売却してまとまった資金が手に入る
- リースバック → 持ち家を売却した売却代金が手に入る
- 不動産売却 → 持ち家を売却した売却代金が手に入る
どちらも「持ち家を売却する」という点に違いはなく、持ち家を売却することでまとまった資金を手にすることができます。
2.資金使途自由
- リースバック → 売却代金は何に使っても構いません。
- 不動産売却 → 売却代金は何に使っても構いません。
売却したお金は、ローンなどの借入とは違い、資金使途が制限されません。どんな資金として、活用しても問題はないのです。
3.誰でも利用できる
- リースバック → 売却
- 不動産売却 → 売却
ですので、買い手がいれば、誰でも利用できる資金調達方法と言えます。
持ち家のリースバックと不動産売却の違い
1.持ち家の売却後、住み続けられるか?退去が必要になるか?
- リースバック → 売却
- 不動産売却 → 売却
なのですが
リースバックは、売却後、賃貸契約を締結して、ご自身で元持ち家を賃貸できるサービスです。
不動産売却の場合は、売却後は、買い手が自由に不動産を運用します。
自分で住む方もいれば
他の方に転売する方もいれば
賃貸に出す方もいます。
再び、自分で元持ち家を借りられる可能性は、極端に低く、まず難しいと考える必要があります。
不動産売却の場合は「売却」と同時に「退去」しなければならないのです。
- リースバック → 元持ち家に住み続けられる
- 不動産売却 → 元持ち家に住み続けられない = 退去が必要
という違いがあるのです。
2.売却額が違う
- リースバック → 売却
- 不動産売却 → 売却
なのですが
リースバックの場合は
- 売却した方に物件を「賃貸」で貸さなければならない
- 売却した方が「買戻し(再購入)」を希望したら、応じなければならない
という、買い手に不利な制約条件があるため、その分売却価格が安くなるのです。
相場では
- 不動産売却 → 市場価格の100%で売却できる
- リースバック → 市場価格の50%~70%で売却できる
という形で、売却額が大きく変わってくるのです。
3.買戻しができるか?否か?
リースバックの場合は
売却した後に「買戻し(再購入)」が可能です。
買戻し額(再購入額)は、売却額の1.1倍~1.3倍と高く設定されるものの、買戻しをすれば、持ち家の所有権を自分に取り返すことができるのです。
不動産売却の場合は
買い戻すことはほぼ不可能です。
一旦、不動産市場に流れてしまうと、よほどの幸運がないと、再度売りに出される可能性も少なく、出されたとしても、ほかの方が買ってしまう可能性がほとんどであり、自分で買い戻すことはできないのです。
- リースバック → 売却額よりも高くなるが、希望したタイミングで買戻しは可能
- 不動産売却 → 買戻しはほぼ不可能
という違いがあります。
4.売却できるまでの期間が異なる
- リースバック → 売却
- 不動産売却 → 売却
なのですが
リースバックの場合は、大手企業・上場企業が多いリースバック業者が「買い手」として、持ち家を購入してくれます。
基本的には
のです。
不動産売却の場合は、不動産仲介業者に依頼して、不動産ポータルサイトや不動産流通機構(レインズ)に掲載して、買い手が現れるのを待つ形になります。
1カ月程度で買い手が見つかるケースもあれば、半年待っても、買い手が現れないケースもあります。いつ、売却できるかの目途がつかないのです。
- リースバック → リースバック業者の審査に通ればすぐに売却できる
- 不動産売却 → 買い手が見つかれば売却できる(買い手が見つかるまでにどのくらいの期間がかかるかはわからない)
という違いがあります。
5.売却成立の可能性が異なる
リースバックの場合は、買い手がリースバック業者だけになるため、リースバック業者が買取不可としてしまうと、リースバックでの売却自体が成立しない可能性が高くなります。
リースバック業者が買取を拒否するケース
- 不動産査定価格よりも、住宅ローンの残債の方が多い
- 首都圏ではない、地方の物件
- 地方でも、土地値が低い田舎の物件
- 築年数が古いマンション
- 借地
リースバック業者も、10社程度あるため、1社のリースバック業者の審査に通らなくても、他のリースバック業者で審査に通る可能性があるのですが、概ね、どのリースバック業者も、審査基準は同じため、利用できない方はどのリースバック業者に申し込んでも、利用できないケースが多いのです。
不動産売却の場合は、どんな条件の悪い物件であったとしても、日本中の不動産投資家や自己利用したい方が不動産ポータルサイト(HOMES、SUUMO、アットホーム)で物件を見て、購入するため、比較的悪条件(地方、築古、マンション)であったとしても、価格が適正であれば、買い手が見つかる可能性があります。
売却できる可能性では
- リースバック → 優良な物件でないと売却できない可能性が高い
- 不動産売却 → 悪条件な物件でも、買い手が見つかる可能性がある
という違いがあります。
6.売却後の家賃負担が違う
売却後は
- リースバック → 売却した元持ち家を賃貸物件として借りる
- 不動産売却 → 売却した後は、別の賃貸物件を借りる
というのが一般的な選択肢となります。
ただし、リースバックの場合は、リースバックを利用するときに「売却額」と同時に「家賃(リース料)」が設定されるのですが、この「家賃(リース料)」は、周辺相場よりも高く設定される可能性が高いのです。
なぜかというと、通常家賃というのは、周辺の家賃相場から決まってきます。その物件の家賃が同じ条件の近くの物件の家賃よりも高いと入居者が見つからないからです。
しかし、リースバックの場合は
入居者がすでに決まっている状態ですから
- リースバック業者も家賃を強気に設定できる
- 周辺家賃相場を気にせずに家賃を設定できる
- 売却額から収益性で家賃を設定できる
という特徴があり、割高な家賃設定になりやすいのです。
売却後の家賃負担は
- リースバック → 周辺相場よりも高い家賃負担が発生する
- 不動産売却 → 周辺相場通りの家賃負担が発生する
という違いがあります。
7.退去のコストが違う
- リースバック → 売却した後も、元持ち家に住み続けられる
- 不動産売却 → 売却した後は、退去する必要がある
ため、リースバックの場合は、退去が不要なのです。
不動産売却の場合は、退去する必要があるため
- 引越し費用
- 不用品の処分費用
- 転居先と合わない家具の買い替え費用
などが発生してしまうのです。
また、新規で賃貸物件を契約するので
- 敷金
- 礼金
- 賃貸の不動産仲介手数料
- 前払い家賃
- 火災保険料
- 保証料
などの費用が発生するのです。
リースバックの場合も、引越し費用や敷金礼金、不動産仲介手数料は不要ですが
- 前払い家賃
- 火災保険料
- 保証料
は、必要になります。
8.近所に売却した事実を知られるか?知られないか?
- リースバック → 売却した後も、元持ち家に住み続けられる
- 不動産売却 → 売却した後は、退去する必要がある
ため、リースバックの場合は、自分から言わない限り、近所の方、知人、友人、ご家族にも、知られずに売却が可能になります。
- 子供に不安をかけさせたくない
- 同居する親に不安をかけさせたくない
- 近所の方に知られたくない
- 友人に知られたくない
- 知人に知られたくない
場合には、リースバックの方が向いているのです。
不動産売却を選んだ場合は、退去・引越しが必要になるので、売却したということがわからなくても、「退去・引越しした」という事実は、誰からもわかる状態になってしまいます。
また、不動産ポータルサイト(HOMES、SUUMO、アットホーム)に掲載されてしまうため、売却の事実も、周知の事実になってしまう可能性があるのです。
9.売却後の賃貸契約が異なる
- リースバック → 売却した後、リースバック業者と元持ち家の賃貸契約を締結する
- 不動産売却 → 売却した後は、別の不動産仲介業者と賃貸契約を締結する
ことになります。
リースバックの場合は「定期借家契約」が主であり、通常の賃貸契約の場合は「普通借家契約」が主になるのです。
「普通借家契約(一般的な賃貸借契約)」と「定期借家契約」の違い
契約更新
- 普通借家契約:正当事由がない限り更新
- 定期借家契約:契約満了により、契約は終了し、更新されない(双方が合意すれば、再契約が可能)
建物賃借料の増減に関する特約の効力
- 普通借家契約:当事者は、賃借料の増減を請求できる
- 定期借家契約:賃借料の増減は特約の定めに従う
定期借家契約の方が更新、賃料交渉に関して、借主の権利が弱い契約となってしまいます。
リースバックの方が、賃貸時の借主の権利が弱いことに注意が必要です。
リースバックと不動産売却比較
比較項目 | リースバック | 不動産売却 |
---|---|---|
利用者 | 個人 | 個人 |
売却価格 | 市場価格の50%~70% | 市場価格 |
売却後の選択肢 | 自宅を賃貸で借り直す 退去する(他の賃貸物件に住む) |
退去する(他の賃貸物件に住む) |
買戻し | 可能 | 不可 |
家賃(リース料) | 周辺相場よりもやや割高 | – |
売却までの期間 | 2週間~1カ月 | 2週間~半年(景気動向や売り物件の内容に左右される) |
まとめ
不動産リースバックと不動産売却には
同じ点には
- 持ち家を売却してまとまった資金が手に入る
- 資金使途自由
- 誰でも利用できる
違う点には
- 持ち家の売却後、住み続けられるか?退去が必要になるか?
- 売却額が違う
- 買戻しができるか?否か?
- 売却できるまでの期間が異なる
- 売却成立の可能性が異なる
- 売却後の家賃負担が違う
- 退去のコストが違う
- 近所に売却した事実を知られるか?知られないか?
- 売却後の賃貸契約が異なる
が挙げられます。
最大の違いは
- 持ち家売却後に住み続けられないけど、高く売れる「不動産売却」
- 持ち家に住み続けられて、買戻しもできるけど、売却額が安くなる「リースバック」
と言えます。
「持ち家をリースバックするのと不動産売却を利用するので、得られるメリットとデメリットについて教えてください。」