不動産担保ローンを申し込むと、まず求められるのが登記事項証明書です。担当者はこの1枚から、その不動産にいくら貸せるかを判断しています。どこを見られているのかが分かれば、申し込む前に自分で担保余力を見積もれますし、通らない理由が先に分かることもあります。ここでは証明書の構成と、法務省が公表している取得手数料を整理します。
先に押さえる要点
- 登記事項証明書は表題部・権利部(甲区)・権利部(乙区)の3つでできています。
- 貸し手がいちばん見るのは乙区です。先順位の抵当権があると、その残債を引いた分しか担保余力になりません。
- 甲区に差押えや仮差押えの登記があると、担保としての評価は大きく下がります。
- 手数料は令和7年4月1日から、書面請求600円、オンライン請求・送付520円、オンライン請求・窓口交付490円です。
- 下調べだけなら登記情報提供サービスの330円が安いですが、証明文が付かないため金融機関への提出には使えません。
- 住所(住居表示)と地番は別物です。地番が分からないと請求できません。
3つのパートで何が分かるか

表題部:その不動産が何かを特定する
土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積が記録されます。担保に取る対象そのものを特定する部分です。ここで実務上つまずきやすいのが、普段使っている住所(住居表示)と、登記で使う地番が違うという点です。証明書を請求するには地番が必要なので、分からない場合は登記所の窓口や電話で確認するか、固定資産税の納税通知書で確かめます。
甲区:所有権のことだけが書かれている
現在の所有者の氏名と住所、所有権を得た原因(売買・相続・贈与など)とその日付、共有なら持分の割合が並びます。差押え、仮差押え、仮処分の登記もここに入ります。
甲区で確認しておきたいのは次の3つです。共有名義になっていないか、登記上の住所が現住所と一致しているか、そして所有権に制限が付いていないか。共有の場合の扱いは共有名義の不動産を担保にできるかの記事で整理しています。
乙区:先に誰が押さえているかが分かる
抵当権・根抵当権の設定、債権額または極度額、利息、損害金、抵当権者の名称、そして順位番号が記録されます。地上権や賃借権といった用益権もここです。
不動産担保ローンの可否を実質的に決めているのは、この乙区です。住宅ローンの抵当権がすでに付いていれば、新しく設定するのは第二順位になります。競売になったときは順位の早い債権者から配当を受けるため、第二順位の貸し手は、評価額から先順位の残債を引いた残りしか回収を見込めません。この差が、そのまま借りられる金額の上限になります。
根抵当権が付いている場合は、債権額ではなく「極度額」で見ます。極度額は、その枠の範囲で繰り返し借り入れができる上限です。残債がゼロでも枠が生きていれば、その分は押さえられていると見られることがあります。抵当権との違いは根抵当権の記事で解説しています。
取得方法と手数料
法務省は登記手数料を公表しています。令和7年4月1日からの主な手数料は次のとおりです。

| 区分 | 請求方法 | 手数料額 | 証明力 |
|---|---|---|---|
| 登記事項証明書(謄抄本) | 書面請求 | 600円 | あり |
| オンライン請求・送付 | 520円 | あり | |
| オンライン請求・窓口交付 | 490円 | あり | |
| 登記事項要約書の交付・登記簿等の閲覧 | — | 500円 | 要約書は証明書ではない |
| 地図等情報 | 書面請求 | 500円 | あり |
| オンライン請求・送付 | 470円 | あり | |
| オンライン請求・窓口交付 | 440円 | あり | |
| 登記情報提供サービス(不動産・全部事項) | オンラインで画面表示・PDF | 330円 | なし |
| 登記情報提供サービス(所有者事項) | オンラインで画面表示・PDF | 140円 | なし |
法務省の注記によると、1通の枚数が50枚を超える場合には、その超える枚数50枚までごとに登記事項証明書は100円、登記事項要約書は50円が加算されます。大きな土地や区分所有の物件では、この加算が効いてくることがあります。

下調べは登記情報提供サービスが安い
自分で担保余力を確かめたいだけなら、登記情報提供サービスが使えます。不動産登記情報の全部事項が330円、所有者事項だけなら140円です。地図と各種図面はそれぞれ360円です。
ただし、このサービスで得られるのは証明文の付かない情報です。運営元は、利用料金について「登記手数料令第12条により国に納入する登記手数料(預り金)と協会手数料(消費税及び地方消費税を含みます。)10円とを合算した金額」と説明しています。金融機関に提出する書類としては、証明力のある登記事項証明書を用意してください。

なお地図および図面情報の提供時間は、平日の午前8時30分から午後9時までと案内されています。深夜に急いで確認したい場合は、この時間帯の制約に注意してください。
申し込む前に自分で確認する手順
固定資産税の納税通知書、権利証、または登記所への問い合わせで地番を特定します。住居表示のままでは請求できません。
下調べなら登記情報提供サービスの330円で十分です。土地と建物は別々に登記されているため、両方を担保に入れるなら2件必要です。
順位番号、抵当権者、債権額または極度額を並べます。すでに完済しているのに抹消されていない抵当権が残っていることもあります。
所有者が自分か、共有か、登記上の住所が現住所と合っているか。差押えの登記がないかも見ます。
不動産の評価額から、乙区に残っている先順位の残債を引きます。ここが実際に借りられる金額の上限の目安になります。
申し込みが決まったら、証明力のある登記事項証明書を取得します。発行からの経過日数に条件がある場合があるので、申込先に確認してください。
完済したのに抵当権が残っている、というのはよくあります。抵当権は完済しても自動では消えません。抹消登記を申請してはじめて乙区から消えます。残っていると担保余力の計算がずれるだけでなく、新しい担保設定の手続きも進みません。手順は抵当権抹消の記事で整理しています。
よくある質問
他人名義の不動産の登記事項証明書も取れますか
登記事項証明書は、誰でも手数料を納めて請求できる公開された情報です。所有者本人でなくても取得できます。ただし、その不動産を担保に入れられるかどうかは別の話で、所有者の同意と手続きが必要です。
登記事項要約書ではだめですか
要約書は500円で取れますが、証明書ではありません。法務省の手数料表でも「登記事項証明書(謄抄本)」とは別の区分として掲載されています。金融機関に提出する書類としては、登記事項証明書を求められるのが一般的です。提出先に確認してください。
マンションでも同じですか
区分所有の建物も登記されており、専有部分の表題部・甲区・乙区があります。敷地権の登記がある場合は、土地の権利も一体として扱われます。ページ数が多くなりやすく、50枚を超えると手数料が加算される点にも注意してください。
オンライン請求はどこからしますか
法務省は、登記事項証明書等の請求にオンライン手続が便利であると案内しています。手数料は書面請求より安く、窓口交付を選べば490円です。具体的な手順は法務局のオンライン請求の案内ページを確認してください。
取ってから何日以内のものが有効ですか
登記事項証明書そのものに有効期限は定められていません。ただし提出先の金融機関が「発行から3か月以内」などの条件を設けていることがあります。この記事では各社の条件までは確認していないため、申込先に確認してください。
乙区に何も書かれていない場合は
抵当権などの設定がない、いわゆる無担保の状態です。担保余力の面では有利になります。ただし借りられる金額は不動産の評価額と申込者の返済能力の両方で決まるため、乙区が白紙であれば必ず希望額が通るというものではありません。
この記事で参照した一次情報
- 法務省「登記手数料について」(令和7年4月1日) https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/(登記事項証明書・要約書・地図等情報の手数料額、50枚超の加算)
- 登記情報提供サービス「サービスの概要・利用料金」 https://www1.touki.or.jp/service/index.html(全部事項330円・所有者事項140円・地図360円、料金の内訳、提供時間)
- 法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」 法務局 オンライン請求の案内(オンライン請求の受け取り方法)
手数料は改定されることがあります。請求前に法務省・法務局の最新の公表内容を確認してください。










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