親から受け継いだ土地を担保に資金を作りたい。ところが登記簿を見ると地目が「畑」だったり、市役所で「市街化調整区域です」と言われたりする。この2つは、不動産担保ローンの相談でつまずきやすい代表格です。担保に入れられないと決まっているわけではありませんが、評価が伸びない理由と、どこで許可が必要になるのかを条文で押さえておくと、話の進め方が変わります。都市計画法と農地法の条文、国土交通省の解説をもとに整理します。
この記事でわかること
- 都市計画法7条3項は「市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする」と定めています。建てられるものが絞られるため、買い手が限られます。
- 同法43条1項により、市街化調整区域のうち開発許可を受けた区域以外では、知事の許可なく建築物を新築・改築・用途変更できません。建て替えの可否が担保評価に直結します。
- 農地法3条1項が許可を求めているのは、所有権の移転と、地上権・永小作権・質権・使用貸借による権利・賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定または移転です。抵当権はこの列挙に含まれていません。
- 問題は回収の場面です。担保を実行して所有権が移る段階で農地法の対象になるため、換価の確実性が下がります。
- 市街化区域内の農地については、農地以外にするための権利移動はあらかじめ農業委員会に届け出る方式が農地法5条1項6号に定められています。同じ農地でも区域で扱いが変わります。
- 申し込む前に用意するのは登記事項証明書・公図・都市計画の確認・建て替えの可否の4点です。これがそろうと、貸し手側の判断が早くなります。
区域と地目で、担保としての扱いは変わる

担保は最終的に換価して回収する前提の仕組みです。だから貸し手が見るのは、面積や取得価格ではなく「いくらで、どれくらいの期間で売れるか」です。市街化調整区域や農地が不利になるのは、この売却の確実性が落ちるからで、土地そのものに問題があるからではありません。
市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」と法律に書いてある
都市計画法7条は区域区分について定めており、その2項で市街化区域を「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とし、3項で「市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする」と定めています。抑制すべき区域である以上、建築行為は原則として制限されます。
具体的な制限は43条1項にあります。「何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して同項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物としてはならない」とされています。

開発許可そのものの基準は34条にあり、市街化調整区域に係る開発行為は、同条各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ知事は開発許可をしてはならない、と定められています。許可できる場合が限定列挙になっているのがポイントです。

国土交通省は、開発許可制度について「新たに開発される市街地の環境の保全、災害の防止、利便の増進を図るために設けられた」ものであり、都市計画で定められるいわゆる線引き制度の実効を確保するためのものだと説明しています。また、開発許可に関する事務は自治事務として整理されており、運用指針は技術的助言で、許可権者の許可権限を拘束するものではないとも明記されています。最終的な判断は自治体ごとに違いうるということです。
「調整区域だから絶対に借りられない」ではありません。すでに建物が建っていて、建て替えの許可が見込めるなら、評価が付く余地はあります。逆に、更地で建築の見込みが立たない場合は、面積が広くても評価が伸びません。市区町村の都市計画課と建築指導課に、その土地で何が建てられるかを先に確認してください。
農地は「設定」ではなく「回収」で効いてくる

農地法3条1項は「農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない」と定めています。
ここで列挙されているのは、所有権の移転と、使用および収益を目的とする権利です。質権は挙げられていますが、抵当権は挙げられていません。抵当権は目的物の使用収益を伴わない担保物権だからです。したがって、農地に抵当権を設定する場面そのもので農地法3条の許可が問題になる構造にはなっていません。

問題になるのは回収の場面です。返済が滞って担保を実行すれば、最終的に所有権が第三者へ移ります。所有権の移転は3条1項の対象そのものなので、買い手の側で許可の手続きが必要になります。買える相手が限られ、手続きにも時間がかかる。この不確実性が、担保評価に織り込まれます。
市街化区域内の農地は扱いが軽い
農地法5条1項は、農地を農地以外のものにするための権利の設定・移転について、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならないと定めています。ただし同項6号で、市街化区域内にある農地について、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地以外のものにするためにこれらの権利を取得する場合は許可が不要とされています。
つまり、同じ農地でも市街化区域内なら転用のハードルが低く、宅地化して売却する道筋が見えやすい。評価に差が出るのは、この違いによるものです。
申し込む前に確認する4点
| 確認するもの | どこで取るか | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局(オンライン請求も可) | 地目、地積、所有者、既存の担保の有無。地目が田・畑なら農地法の話になる |
| 公図・地積測量図 | 法務局 | 形状、接道、隣地との関係。接道がないと再建築の判断に影響する |
| 都市計画の確認 | 市区町村の都市計画課 | 市街化区域か市街化調整区域か、用途地域、区域区分の有無 |
| 建築の可否 | 市区町村の建築指導課、開発許可担当 | その土地で建て替えができるか、どんな用途なら許可の余地があるか |
登記事項証明書の読み方は甲区・乙区の見方で詳しく整理しています。地目と既存の担保は、相談の前に自分で確認できます。
登記名義が被相続人のままだと、担保設定の前に相続登記が必要です。手順は相続不動産を担保にするときの流れとあわせて確認してください。
共有持分に抵当権を設定できるかは、持分の扱いによって変わります。全体に設定するなら共有者全員の関与が必要です。
担保評価は相続税路線価や固定資産税評価額とは別のものです。何を基準に何割で見るかは貸し手ごとに違います。
「調整区域だから」で終わらせず、建築の可否なのか、換価の見込みなのか、面積なのかを聞くと、次の相談先が絞れます。
評価額の考え方そのものは不動産の評価額は4つあるで整理しています。担保余力の出し方を先に把握しておくと、提示された金額の妥当性を自分で確かめられます。
それでも資金が必要なときの選択肢
| 状況 | 考えられる進め方 | 確認すること |
|---|---|---|
| 調整区域だが建物が建っていて、建て替えの許可が見込める | 通常の不動産担保ローンで相談できる余地がある | 自治体に建て替えの可否を確認し、その回答を持って相談する |
| 調整区域で更地、建築の見込みが立たない | 担保評価は伸びにくい | 他に担保に入れられる不動産があるか。無担保の資金調達と比べる |
| 市街化区域内の農地 | 転用の届出で宅地化する道筋があるぶん有利 | 農業委員会への届出の手順と、転用後の用途 |
| 市街化調整区域内の農地 | もっともハードルが高い | 転用許可の見込み。見込みが立たないなら別の手段を検討する |
| 複数の土地を持っている | 条件のよい物件を担保にする | どの物件なら評価が付くかを、区域と地目で並べて比べる |
「どんな土地でも借りられる」とうたう相手には注意してください。担保の評価は換価の見込みで決まります。評価が付きにくい土地に対して高い金額を提示されたなら、金利や手数料、期限の利益喪失の条件など、別のところで採算を取る設計になっていないかを契約書で確認してください。
よくある質問
市街化調整区域の土地は不動産担保ローンに使えませんか
使えないと決まっているわけではありません。ただし都市計画法7条3項は市街化調整区域を「市街化を抑制すべき区域」と定めており、43条1項により開発許可を受けた区域以外では知事の許可なく建築物を新築・改築できません。建て替えの見込みが立つかどうかで評価が大きく変わります。
農地に抵当権は設定できますか
農地法3条1項が許可を求めているのは、所有権の移転と、地上権・永小作権・質権・使用貸借による権利・賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定または移転です。抵当権はこの列挙に含まれていません。ただし、担保を実行して所有権が移る段階では3条の対象になります。
なぜ農地は担保評価が低くなるのですか
売却で回収する確実性が下がるからです。所有権が移る場面で農業委員会の許可が必要になるため、買える相手が限られ、手続きにも時間がかかります。担保は換価して回収する前提なので、この不確実性が評価に反映されます。
市街化区域の農地なら扱いは違いますか
違います。農地法5条1項6号は、市街化区域内にある農地について、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て農地以外のものにするために権利を取得する場合は許可が不要としています。転用のハードルが低いぶん、宅地化して売却する道筋が見えやすくなります。
地目が「畑」でも実際は宅地として使っています。どうなりますか
登記簿上の地目と現況が違う場合があります。まず登記事項証明書で地目を確認し、現況との差がある理由を整理してください。地目の変更や転用の手続きが済んでいるかどうかで扱いが変わります。手続きの要否は農業委員会に確認するのが確実です。
調整区域でも建て替えできる場合はありますか
都市計画法43条1項には、都市計画事業の施行として行う場合、非常災害のため必要な応急措置として行う場合、仮設建築物の新築などの例外が定められています。また同条2項により、許可の基準は33条・34条の開発許可の基準の例に準じて政令で定めるとされています。実際に許可されるかは自治体の判断になるため、事前相談が必要です。
相談前に何を用意すればいいですか
登記事項証明書、公図、市区町村で確認した都市計画の内容、建て替えの可否についての回答の4点です。これがそろっていると、貸し手が評価の可否を判断しやすくなり、話が早く進みます。
参照した一次情報
- e-Gov法令検索「都市計画法(昭和四十三年法律第百号)」(第7条 区域区分、第34条 開発許可の基準、第43条 開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)
- e-Gov法令検索「農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)」(第3条 権利移動の制限、第5条 転用のための権利移動の制限)
- 国土交通省「都市計画:開発許可制度」(制度の趣旨、開発許可制度運用指針の位置づけ)
- 農林水産省「農地転用許可制度について」










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