譲渡担保に初めて法律ができた|令和7年法律第56号の対象は動産と債権、不動産等は明文で除かれている

譲渡担保法の対象が動産・債権であること、不動産の譲渡担保は対象外であること、施行が公布から2年6月以内であることを3つ並べたアイキャッチ

譲渡担保は、長いあいだ条文のない担保でした。民法にも特別法にも規定がなく、判例の積み重ねだけで運用されてきた担保です。それが2025年に法律になりました。ただし対象は動産と債権で、不動産は明文で外されています。不動産を担保に入れる立場から見て、この法律の何が変わり、何が変わらないのかを、国会と法務省の公表資料で整理します。

先に結論

「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律」(令和7年法律第56号)が2025年5月30日に成立し、同年6月6日に公布されました。衆参とも全会一致です。

対象は参議院の議案要旨にこう書かれています。金銭債務を担保するため、動産、債権その他の財産(不動産等を除く。)を担保の目的とすることを内容とする契約です。

つまり不動産の譲渡担保は、この法律の対象ではありません。不動産を目的とする担保は、引き続き民法の抵当権と、仮登記担保法の枠組みで扱われます。

施行は先です。原則として、公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。

譲渡担保とは、所有権を移して担保にする形

譲渡担保は、債務を担保するために目的物の所有権を債権者へ移し、債務を返したら戻してもらうという形の担保です。抵当権のように登記簿へ担保権を書き込むのではなく、所有権そのものを移す点が違います。

法務省民事局は、この譲渡担保について「これまで法令には明文の規定がなかった」と書いています。実務では長く使われてきたにもかかわらず、根拠条文が無い状態が続いていたということです。

図1 条文がなかったことで起きていたこと

効力の範囲が不明確

設定者が目的物を使い続けられるのか、処分できるのか。判例はありますが、条文として示されたものはありませんでした。

実行の方法が不明確

どう換価し、どこまでを清算するのか。裁判所の手続によらない実行の手順が、法律に書かれていませんでした。

倒産したときの扱いが不明確

譲渡担保権者が破産手続でどう扱われるか。新法は別除権者として取り扱う規定を置くとされています。

対象は動産と債権。不動産等は明文で除かれている

ここが不動産担保ローンを扱う立場で最も重要な点です。参議院の議案要旨は、この法律案の対象をはっきり限定しています。

参議院法務委員会の議案要旨は、法律案の目的をこう書いています。「金銭債務を担保するため、動産、債権その他の財産(不動産等を除く。)を担保の目的とすることを内容とする契約の利用状況に鑑み」。括弧の中の4文字が、不動産の扱いを決めています。

参議院の議案情報ページで、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案の議案要旨に不動産等を除くと書かれている画面キャプチャ
参議院「議案情報」第217回国会(常会)提出番号43。議案要旨の冒頭に「動産、債権その他の財産(不動産等を除く。)」とあり、公布年月日と法律番号も同じページに載っている。
表1 担保の目的物ごとに、どの法律で扱われるか(公表資料の記載による)
目的物 譲渡担保法の対象 実際に使われる枠組み
動産(在庫・機械など) 対象 譲渡担保法。対抗要件は整備法で見直される動産譲渡登記など
債権(売掛金など) 対象 譲渡担保法。対抗要件は債権譲渡登記など
不動産(土地・建物) 対象外 民法の抵当権、根抵当権。代物弁済の予約などは仮登記担保法
所有権留保(売買代金) 対象 譲渡担保法。対抗要件の規定を置き、譲渡担保契約の規定を準用

不動産を担保に入れるときの基本は、これまでどおり抵当権です。仕組みは抵当権とは?に、継続的な取引で使う根抵当権は根抵当権とは?にまとめています。

新法が置く規定は5つの柱に分かれる

議案要旨は、法律案の主な内容を5点に分けて示しています。動産と債権に関する部分が中心です。

表2 議案要旨が挙げている5つの柱
柱 置かれる規定
一 契約の効力 譲渡担保権者の優先弁済権。動産譲渡担保権設定者による目的動産の使用・収益。集合動産譲渡担保権設定者による処分。集合債権譲渡担保権設定者による取立て。数個の譲渡担保権が競合する場合の優劣関係
二 実行 裁判所の手続によらない動産譲渡担保権の実行。実行のための引渡命令。債権譲渡担保権者による目的債権の取立て
三 倒産手続 譲渡担保権者には破産法等の質権を有する者に関する規定を適用し、破産手続等で別除権者として扱う。再生手続等における集合動産・集合債権譲渡担保権の実行手続の取消命令
四 所有権留保 対抗要件に関する規定。譲渡担保契約に関する規定を準用
五 施行 原則として、公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行

二の「裁判所の手続によらない実行」は、不動産の担保と対照的です。不動産の抵当権は、任意に売るか、裁判所の競売手続によるかのどちらかになります。競売の進み方は担保不動産競売の期間入札はどう進む?で扱っています。

成立までの経緯と、いつ使えるようになるか

法案は内閣提出で、衆議院が先議でした。国会の審議経過は参議院の議案情報ページに日付つきで載っています。

図2 譲渡担保法ができるまでと、これから

令和7年3月7日
内閣が第217回国会に提出(閣法第43号)。衆議院先議。
令和7年5月21日・22日
衆議院法務委員会で可決、本会議で可決。採決態様は全会一致。
令和7年5月29日・30日
参議院法務委員会で可決、本会議で可決。こちらも全会一致で、押しボタンによる採決。
令和7年6月6日
公布。譲渡担保法が法律第56号、整備法が法律第57号。
公布から2年6月以内
一部の規定を除き、政令で定める日から施行。施行日は本記事の確認時点では決まっていません。
法務省の譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律についてのページで、成立日と公布日、法律番号、施行時期が書かれている画面キャプチャ
法務省民事局「『譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律』(譲渡担保法)について」。法律本文、整備法、新旧対照条文、概要、パンフレットのPDFが置かれている。

整備法は登記の仕組みを見直す

同時に公布された整備法(令和7年法律第57号)は、譲渡担保権等の十分な公示を行うためのものだと法務省は説明しています。具体的には「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」を改正し、動産・債権譲渡登記制度を見直すとされています。

不動産には、すでに不動産登記という公示の仕組みがあります。抵当権は登記簿に順位をつけて記録され、第三者にも見える形になっています。動産と債権にはこの仕組みが弱く、そこを登記制度の見直しで埋めるという設計です。

図3 公示の仕組みの違い

不動産

不動産登記に抵当権が記録され、順位まで公示されます。何番抵当かが誰にでも分かる状態です。

動産・債権

動産譲渡登記・債権譲渡登記があり、整備法でこの制度が見直されます。公示を厚くすることが目的と説明されています。

なぜ差があるか

不動産は1つずつ特定でき、登記簿が整っています。動産は移動し、在庫のように入れ替わるため、特定と公示が難しい性質があります。

抵当権の順位がどう決まるかは抵当権の順位は変えられる?で扱っています。

不動産を所有権移転型で担保に入れるときに見る法律

不動産でも、所有権を移す形の担保が使われることがあります。代物弁済の予約や売買予約に仮登記を付ける形です。これは譲渡担保法ではなく、仮登記担保法が規律します。

図4 不動産で所有権移転型の担保を検討するときの確認順

  1. まず抵当権で足りるかを考える。登記で順位が公示され、実行の手続も法律で決まっています。費用の出し方は諸費用の記事にまとめています。
  2. 所有権を移す形にする必要があるかを確認する。所有権が移ると、固定資産税の名義や売却の自由度が変わります。
  3. 仮登記担保法の清算義務を確認する。清算期間と清算金の支払義務が定められています。代物弁済の予約で不動産を担保に入れたら?で扱っています。
  4. 新法の対象ではないことを押さえる。譲渡担保法の規定は、不動産を目的とする契約には適用されません。
  5. リースバックとの違いを確認する。所有権を移して使い続ける点が似ているため、契約の性質がどちらなのかを書面で確かめてください。

この記事では、法務省と国会の公表資料に書かれている範囲だけを扱いました。条文の個別の解釈や、施行後の実務の運用については触れていません。譲渡担保法の条文は法務省のページからPDFで公開されています。個別の契約の判断は、弁護士や司法書士にご相談ください。

よくある質問

譲渡担保法はいつできましたか。
2025年5月30日に成立し、同年6月6日に公布されました。令和7年法律第56号です。
不動産の譲渡担保もこの法律の対象ですか。
対象外です。参議院の議案要旨は、担保の目的を「動産、債権その他の財産(不動産等を除く。)」と書いています。
いつから使えるようになりますか。
一部の規定を除き、公布の日である2025年6月6日から起算して2年6月を超えない範囲内で、政令が定める日から施行されます。確認時点で施行日は決まっていません。
整備法とは何ですか。
譲渡担保法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和7年法律第57号)です。動産・債権譲渡登記制度の見直しなどを行います。
譲渡担保権者は倒産手続でどう扱われますか。
議案要旨によると、破産法等における質権を有する者に関する規定が適用され、破産手続等で別除権者として取り扱われることになります。
不動産を担保にするなら何を使えばよいですか。
抵当権または根抵当権が基本です。所有権を移す形にする場合は、仮登記担保法の清算義務が関わります。

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