抵当権の順位は、いったん付いたら動かせないものではありません。民法374条は各抵当権者の合意による変更を認めており、登録免許税は抵当権1件につき1,000円です。ただし登記を入れるまで効力は生じず、利害関係人がいればその承諾も要ります。順位を動かす3つの方法と、それぞれにかかる費用を条文と登録免許税法の別表で確認します。2番抵当でも借りられるかという受け手側の話は第二抵当権(2番抵当)とはで扱っています。
前提:順位は登記の前後で決まる
民法373条は「同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による」と定めています。基準は契約日でも融資の実行日でもなく、登記をした前後です。同じ日に複数の登記がされた場合は受付番号の順になります。
図:売却代金が配られる順番
先に登記した抵当権者が、被担保債権の額まで先に回収します。代金がここで尽きれば、以降の順位には何も残りません。
1番が回収したあとの残額から配当を受けます。不動産担保ローンの多くはここに入ります。
さらに残った分だけです。残らなければ配当はゼロで、債権そのものは消えずに残ります。
だから2番抵当で借りられる額は「不動産の価値」ではなく「1番を引いた残り」で決まります。評価額が3,000万円でも、1番の残債が2,500万円なら、担保としてあてにできるのは差額の部分だけです。評価の出し方は不動産の評価額は4つあるで整理しています。
順位は合意で変えられるが、登記しないと効力がない

民法374条第1項は「抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない」としています。そして第2項が「前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない」と続きます。
ここが実務上の要点です。当事者が書面で合意しても、登記を入れるまでは順位は変わりません。しかも合意に加わるのは順位を入れ替える抵当権者全員で、転抵当権者など利害関係を持つ者がいれば、その承諾も要ります。1番の金融機関が首を縦に振らなければ成立しません。
順位変更の登録免許税は1件1,000円

| 登記の種類 | 課税標準 | 税率 |
|---|---|---|
| 抵当権の順位の変更(八) | 抵当権の件数 | 1件につき1,000円 |
| 賃借権の先順位抵当権に優先する同意(九) | 賃借権及び抵当権の件数 | 1件につき1,000円 |
| 抵当権の移転(相続・合併)(六)イ | 債権金額又は極度金額 | 1,000分の1 |
| 抵当権の移転(その他の原因)(六)ロ | 債権金額又は極度金額 | 1,000分の2 |
順位変更の税額は、債権額ではなく抵当権の件数で計算します。1番と2番を入れ替えるなら2件で2,000円です。動かす金額に比例しないため、税だけを見れば負担は小さい登記です。ハードルは費用ではなく、先順位の抵当権者から合意と承諾を取れるかどうかにあります。
順位を実際に動かす3つの方法
図:順位が変わる場面
先順位を消す
1番の被担保債権を完済して抵当権抹消登記を入れると、2番が繰り上がります。合意も承諾も要らない代わりに、完済できる資金が要ります。
順位の変更(民法374条)
各抵当権者の合意と、利害関係人の承諾を得て登記します。登記して初めて効力が生じます。登録免許税は抵当権1件につき1,000円です。
順位の譲渡・放棄(民法376条)
抵当権者は「同一の債務者に対する他の債権者の利益のために」抵当権またはその順位を譲渡・放棄できます。順位そのものは動かさず、当事者間で配当を融通する扱いです。
民法376条第1項は「抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる」と定めます。同条第2項は、数人のために処分したときの受益者の権利の順位は「抵当権の登記にした付記の前後による」としています。
順位の譲渡には通知か承諾が要る
民法377条第1項は、抵当権の処分について民法467条の規定に従って主たる債務者に通知するか、主たる債務者が承諾しなければ、主たる債務者・保証人・抵当権設定者およびこれらの承継人に対抗できないと定めています。第2項では、通知や承諾があったあとに受益者の承諾を得ずにした弁済は、その受益者に対抗できないとしています。当事者だけで決めて終わる話ではありません。
先順位を消して繰り上げるときの費用
合意が取れないときに残る手段が、先順位の債務を返し終えて抵当権抹消登記を入れることです。この場合、順位変更の合意も利害関係人の承諾も要りません。登記が消えれば、後順位だったものが自動的に繰り上がります。
| 登記の種類 | 課税標準 | 税率 |
|---|---|---|
| 登記の抹消(十五) | 不動産の個数 | 1個につき1,000円 |
| 同一の申請書で20個を超える不動産の抹消 | 申請件数 | 1件につき2万円 |
| 抵当権の設定(五) | 債権金額・極度金額など | 1,000分の4 |
土地と建物のセットなら不動産2個で2,000円です。抹消そのものの税は軽い一方、新しく抵当権を設定し直す場合は債権金額の0.4%がかかります。借換えで順位を整理するときは、この設定分が実質的な費用の中心になります。抹消手続きを自分で進める手順は抵当権抹消は自分でできる?にまとめています。
なお、順位を上げること自体が目的になると判断を誤ります。後順位のまま借りられるなら、先順位を無理に返して繰り上げる必要はありません。見るべきは順位の数字ではなく、評価額から先順位の残債を引いた残りが必要額に足りるかどうかです。
後順位で借りるときに見る数字
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 評価額 | 担保として見込む金額。貸し手ごとに掛け目が違う |
| 先順位の残債 | 登記事項証明書の乙区と、返済予定表で突き合わせる |
| 利息の扱い | 民法375条により、抵当権者が抵当権を行使できる利息等は満期となった最後の2年分まで(特別の登記をした場合を除く) |
| 残る枠 | 評価額 −(先順位の残債+最後の2年分の利息等)が目安 |
登記事項証明書の乙区に書かれているのは債権額(借りた当初の額)であって、今の残債ではありません。読み方は登記事項証明書の読み方にまとめています。実際の残債は返済予定表や残高証明で確認する必要があります。
民法375条第1項は「抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる」としています。後順位の抵当権者にとっては、先順位が優先的に取っていく額に上限があるという意味になります。
よくある質問
抵当権の順位は何で決まりますか
民法373条により、同一の不動産に複数の抵当権が設定されたときの順位は登記の前後によります。契約日や融資実行日ではありません。
2番抵当でも借りられますか
借りられるかどうかは、評価額から先順位の残債を引いた残りがどれだけあるかで決まります。順位そのものが申込みを妨げるわけではありません。
順位を入れ替えることはできますか
民法374条により、各抵当権者の合意で変更できます。利害関係を有する者があるときはその承諾も必要で、登記をしなければ効力を生じません。
順位変更の費用はいくらですか
登録免許税は、登録免許税法別表第一 第1号(八)により抵当権1件につき1,000円です。2件を入れ替えるなら2,000円です。このほかに司法書士へ依頼する場合の報酬がかかります。
順位の譲渡と順位の変更は違いますか
違います。順位の変更(民法374条)は登記簿上の順位そのものを入れ替えるものです。順位の譲渡・放棄(民法376条)は順位を動かさず、当事者の間で配当の受け方を調整するもので、受益者の権利の順位は抵当権の登記にした付記の前後によります。










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