抵当権消滅請求とは?第三取得者だけが使える手続きと、2か月で承諾とみなされる民法384条

抵当権は買った人が消せることがあると書いたアイキャッチ。できる人・できない人・期限を並べた3枚のカードと、2か月のバッジを配置している

抵当権の付いた不動産を買ってしまった。あるいは、担保に入っている物件を相続した。そのとき、借りた本人ではない自分の側から抵当権を消せる道が民法に用意されています。抵当権消滅請求です。使える人は限られ、期限もあり、債権者が動かなければ承諾したものとみなされます。条文の順に、誰が・いつまでに・何を送るのかを確かめていきます。

この記事でわかること

  • 抵当権消滅請求ができるのは抵当不動産の第三取得者だけです(民法379条)。
  • 主たる債務者・保証人・これらの者の承継人はできません(380条)。停止条件付きの第三取得者も、条件の成否が未定の間はできません(381条)。
  • 期限は抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前まで(382条)。
  • 登記をした各債権者へ3種類の書面を送ります(383条)。債権者が2か月以内に競売を申し立てなければ、提示額を承諾したものとみなされます(384条)。
  • 登記をしたすべての債権者が承諾し、その金額を払い渡すか供託したときに抵当権が消滅します(386条)。

まず「第三取得者」であることが入口

民法379条は「抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる」と定めています。第三取得者とは、抵当権が付いたままの不動産の所有権を取得した人のことです。売買で買った人、贈与を受けた人、相続で承継した人が当てはまります。

e-Gov法令検索の民法のページの画面キャプチャ。第378条の代価弁済、第379条の抵当権消滅請求、第380条が表示されている
出典:e-Gov法令検索「民法」第378条〜第380条

380条は、主たる債務者、保証人、これらの者の承継人は抵当権消滅請求をすることができないとしています。借りた本人やその保証人は、そもそも全額を返す義務を負っている立場です。そこに「代価だけ払って抵当権を消す」道を認めれば、債務そのものが骨抜きになります。だから入口で外されています。

381条は、停止条件付きの第三取得者について、条件の成否が未定である間は請求できないとしています。所有権を取れるかどうかが決まっていない段階では、まだ第三取得者として扱われないということです。

抵当権消滅請求ができる人・できない人
立場 請求の可否 根拠
抵当不動産の第三取得者 できる 民法379条
主たる債務者 できない 民法380条
保証人 できない 民法380条
債務者・保証人の承継人 できない 民法380条
停止条件付第三取得者(条件の成否が未定の間) できない 民法381条

期限は「差押えの効力が発生する前」

382条は、第三取得者は抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に抵当権消滅請求をしなければならないと定めています。つまり、競売が始まってからでは遅いということです。抵当権の付いた物件を買ったなら、登記簿で抵当権の存在を確かめた時点から、動ける時間が限られていると考えることになります。

差押えの効力が生じたあとは、この手続きは使えません。競売の開始が近いかどうかは登記事項証明書で差押えの登記を見て判断することになります。抵当権が付いた物件を取得する場面では、契約の前に登記の状態を確かめておくことが前提になります。

送る書面は3種類(民法383条)

手続きの中身は383条にあります。第三取得者は、登記をした各債権者に対し、次の3つの書面を送付しなければなりません。「各債権者」なので、抵当権が複数付いていれば、その全員が相手になります。

e-Gov法令検索の民法のページの画面キャプチャ。第383条の抵当権消滅請求の手続、第384条の債権者のみなし承諾、第386条の抵当権消滅請求の効果が表示されている
出典:e-Gov法令検索「民法」第383条〜第388条

1

取得の内容を記載した書面取得の原因および年月日、譲渡人と取得者の氏名・住所、抵当不動産の性質・所在・代価、その他取得者の負担を書きます。

2

登記事項証明書抵当不動産に関するもので、現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限られます。

3

2か月の条件を書いた書面債権者が2か月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、代価または特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し、または供託する旨を記載します。

3番目の書面が、この制度の要です。第三取得者は「代価」または「特に指定した金額」を示します。代価をそのまま提示することも、別の金額を指定することもできます。相手の債権者から見れば、この金額を受け入れるか、2か月以内に競売へ動くかの二択になります。

2か月動かなければ、承諾したものとみなされる

384条は、書面の送付を受けた債権者が次のいずれかに当たる場合、第三取得者が提示した代価または金額を承諾したものとみなすと定めています。沈黙が承諾になる、珍しい作りです。

民法384条が「承諾したものとみなす」と定める場合
号 内容
1号 書面の送付を受けた後2か月以内に、抵当権を実行して競売の申立てをしないとき
2号 その競売の申立てを取り下げたとき
3号 競売の申立てを却下する旨の決定が確定したとき
4号 申立てに基づく競売の手続を取り消す旨の決定が確定したとき(民事執行法の一定の規定による決定を除く)

債権者が競売を申し立てるときは、385条により、その期間内に債務者と抵当不動産の譲渡人へ通知しなければなりません。第三取得者だけが知っていて、借りた本人が知らないまま競売が進むことのないようにする定めです。

払い渡すか供託して、はじめて消える

386条は効果を定めています。登記をしたすべての債権者が第三取得者の提供した代価または金額を承諾し、かつ第三取得者がその承諾を得た金額を払い渡し、または供託したときに、抵当権は消滅します。承諾されただけでは消えません。金銭の支払いか供託が要ります。

承諾は全員ぶんが要る

386条は「登記をしたすべての債権者」が承諾することを求めています。1人でも競売に動けば、そこで消滅請求は成り立ちません。

払い渡しか供託までが手続き

承諾を得た金額を実際に払うか供託するところまでが条件です。ここを終えて抵当権が消えます。

順位に従って弁済する

383条3号の書面に書くとおり、債権の順位に従って弁済または供託します。後順位の債権者へ先に払う形にはなりません。

差押え前に動く

382条の期限があるため、登記で差押えの有無を確かめてから段取りを組みます。

代価弁済(378条)との違い

似た制度に代価弁済があります。378条は、抵当不動産について所有権または地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその代価を弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅すると定めています。

代価弁済と抵当権消滅請求の違い
項目 代価弁済(378条) 抵当権消滅請求(379条以下)
誰が動き出すか 抵当権者の請求に応じる形 第三取得者から請求する
対象になる権利 所有権または地上権を買い受けた第三者 抵当不動産の第三取得者
金額 その代価 代価または特に指定した金額
相手方 請求してきた抵当権者 登記をした各債権者(全員)
消滅の範囲 その第三者のために消滅する 抵当権が消滅する

代価弁済は抵当権者の側から声がかかるのを待つ形、抵当権消滅請求は買った側から働きかける形です。担保に入ったままの物件を取得するとき、どちらの道が現実的かは、抵当権者の意向と残っている債権額で変わります。

抵当権そのものの性質は抵当権とは何かを民法369条で整理した記事、順位の考え方は抵当権の順位の記事にまとめています。完済したあとの抹消登記は抵当権抹消を自分でやる記事で扱っています。

よくある質問

抵当権抹消登記とは違うのですか

違います。抹消登記は、被担保債権が消えて抵当権が消滅したあとに、登記簿の記載を消す手続きです。抵当権消滅請求は、債権が残っている状態で抵当権そのものを消すための民法上の制度です。

抵当権が2つ以上付いているときはどうなりますか

383条は「登記をした各債権者」に書面を送るとしています。386条は「登記をしたすべての債権者」の承諾を求めています。いずれかが競売に動けば成立しません。

相続で取得した場合も第三取得者になりますか

抵当不動産の所有権を取得した人であれば第三取得者に当たりますが、被相続人が主たる債務者や保証人であった場合、380条の「これらの者の承継人」に当たるため請求できません。誰から何を承継したかで分かれます。

提示する金額は自由に決められますか

383条3号は「代価又は特に指定した金額」としています。ただし債権者が納得しなければ、2か月以内に競売を申し立てられます。低すぎる金額は、そのまま競売の引き金になります。

債権者が競売を申し立てたら終わりですか

384条は、申立てが取り下げられたとき、却下の決定が確定したとき、手続を取り消す決定が確定したときにも承諾があったものとみなすとしています。申立てが出た時点で自動的に終わるわけではありません。

まとめ

抵当権消滅請求は、担保の付いた不動産を取得した人が、代価または自分で指定した金額を提示して抵当権を消すための制度です。使えるのは第三取得者だけで、借りた本人や保証人は外されています。期限は競売の差押えの効力が生じる前まで。登記をした各債権者へ3種類の書面を送り、2か月のあいだに誰も競売へ動かなければ、提示した金額を承諾したものとみなされます。全員の承諾を得て、その金額を払い渡すか供託したときに抵当権が消えます。抵当権付きの物件を扱うなら、登記簿で差押えの有無を確かめるところから始めることになります。

参照した条文

  • 民法(明治29年法律第89号)第378条(代価弁済)/e-Gov法令検索https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 民法 第379条(抵当権消滅請求)、第380条、第381条/同上
  • 民法 第382条(抵当権消滅請求の時期)、第383条(抵当権消滅請求の手続)/同上
  • 民法 第384条(債権者のみなし承諾)、第385条(競売の申立ての通知)、第386条(抵当権消滅請求の効果)/同上
不動産担保ローン金利比較
不動産担保ローン借り換えランキング
不動産担保ローン審査基準

おすすめの不動産担保ローンはこちら

不動産担保ローン人気ランキング

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です