不動産リースバックをするときに気になるのは「買取額」ですが、同時に今後支払い続けなければならない「家賃」も重要な要素となります。今回は、不動産リースバックの家賃はいくらになるのか?家賃相場・家賃設定方法・家賃計算について解説します。
不動産リースバックの仕組みと「家賃」についておさらい
不動産リースバックの仕組み
- 持ち家(マイホーム)を不動産リースバック業者に売却して、所有権が不動産リースバック業者に移る
- 不動産リースバック業者から元持ち家を賃貸物件として、借りて住み続ける
なのです。
不動産リースバックの契約後は、持ち家(マイホーム)は、売却しているため、元持ち家になるのですが、この元持ち家を賃貸契約をして、借りることになるため「家賃(リース料)」が発生するのです。
お金のことだけを見れば
- 不動産リースバックの売買契約 → 売却額が手に入る
- 不動産リースバックの賃貸契約 → 毎月の家賃負担が発生する
ことになります。
不動産リースバックでの家賃設定の考え方
通常の賃貸物件の家賃設定の考え方
家賃は、周辺の家賃相場に合わせて決められます。
周辺のマンション・アパートの家賃が安いのにも関わらず、高い家賃設定をしてしまったら、誰も借りてくれないことになるからです。
借りる人を安定的に獲得するために(空室を出さないために)周辺の家賃相場から、家賃を設定するのが通常の賃貸物件の家賃設定考え方となります。
不動産リースバックでの家賃設定の考え方
通常の賃貸物件と違って、すでに借りる人が決まっているのが不動産リースバックです。
そのため、不動産リースバック業者は、家賃設定に周辺の家賃相場を参考にする必要がありません。
周辺のマンション・アパートの家賃と比較して、不動産リースバックの家賃設定が高くても、安くても、借りる人は、元持ち家の売主なのですから、その物件である必要があり、周辺の家賃相場の影響を受けないのです。
不動産リースバック業者の「期待利回り」で家賃が決まります。
期待利回りとは
- 期待利回り = 購入後に期待される家賃の年間収益 / 不動産価格
5,000万円で購入したアパートの家賃収入が月50万円見込める場合、
- 期待利回り = 50万円 × 12カ月 / 5,000万円 = 12.0%
という計算になるのです。
不動産リースバック業者は、不動産リースバックにおける「期待利回り」をあらかじめ設定しています。
「物件の買取額」と「期待利回り」から、自動的に「家賃(リース料)」が決まるのです。
試算例
期待利回り:10%の不動産リースバック業者の場合
物件の買取額:2,400万円
- 家賃(リース料) = 物件の買取額:2,400万円 × 期待利回り:10% / 12カ月 = 20万円
物件の買取額:1,800万円
- 家賃(リース料) = 物件の買取額:1,800万円 × 期待利回り:10% / 12カ月 = 15万円
物件の買取額:1,200万円
- 家賃(リース料) = 物件の買取額:1,200万円 × 期待利回り:10% / 12カ月 = 10万円
期待利回り:8%の不動産リースバック業者の場合
物件の買取額:2,400万円
- 家賃(リース料) = 物件の買取額:2,400万円 × 期待利回り:8% / 12カ月 = 16万円
物件の買取額:1,800万円
- 家賃(リース料) = 物件の買取額:1,800万円 × 期待利回り:8% / 12カ月 = 12万円
物件の買取額:1,200万円
家賃(リース料) = 物件の買取額:1,200万円 × 期待利回り:8% / 12カ月 = 8万円
期待利回り:6%の不動産リースバック業者の場合
物件の買取額:2,400万円
- 家賃(リース料) = 物件の買取額:2,400万円 × 期待利回り:6% / 12カ月 = 12万円
物件の買取額:1,800万円
- 家賃(リース料) = 物件の買取額:1,800万円 × 期待利回り:6% / 12カ月 = 9万円
物件の買取額:1,200万円
- 家賃(リース料) = 物件の買取額:1,200万円 × 期待利回り:6% / 12カ月 = 6万円
不動産リースバックの家賃早見表
査定額/期待利回り | 4% | 5% | 6% | 7% | 8% | 9% | 10% |
---|---|---|---|---|---|---|---|
400万円 | 1.3万円 | 1.7万円 | 2.0万円 | 2.3万円 | 2.7万円 | 3.0万円 | 3.3万円 |
800万円 | 2.7万円 | 3.3万円 | 4.0万円 | 4.7万円 | 5.3万円 | 6.0万円 | 6.7万円 |
1,200万円 | 4.0万円 | 5.0万円 | 6.0万円 | 7.0万円 | 8.0万円 | 9.0万円 | 10.0万円 |
1,600万円 | 5.3万円 | 6.7万円 | 8.0万円 | 9.3万円 | 10.7万円 | 12.0万円 | 13.3万円 |
2,000万円 | 6.7万円 | 8.3万円 | 10.0万円 | 11.7万円 | 13.3万円 | 15.0万円 | 16.7万円 |
2,400万円 | 8.0万円 | 10.0万円 | 12.0万円 | 14.0万円 | 16.0万円 | 18.0万円 | 20.0万円 |
2,800万円 | 9.3万円 | 11.7万円 | 14.0万円 | 16.3万円 | 18.7万円 | 21.0万円 | 23.3万円 |
3,200万円 | 10.7万円 | 13.3万円 | 16.0万円 | 18.7万円 | 21.3万円 | 24.0万円 | 26.7万円 |
3,600万円 | 12.0万円 | 15.0万円 | 18.0万円 | 21.0万円 | 24.0万円 | 27.0万円 | 30.0万円 |
4,000万円 | 13.3万円 | 16.7万円 | 20.0万円 | 23.3万円 | 26.7万円 | 30.0万円 | 33.3万円 |
4,400万円 | 14.7万円 | 18.3万円 | 22.0万円 | 25.7万円 | 29.3万円 | 33.0万円 | 36.7万円 |
4,800万円 | 16.0万円 | 20.0万円 | 24.0万円 | 28.0万円 | 32.0万円 | 36.0万円 | 40.0万円 |
5,200万円 | 17.3万円 | 21.7万円 | 26.0万円 | 30.3万円 | 34.7万円 | 39.0万円 | 43.3万円 |
5,600万円 | 18.7万円 | 23.3万円 | 28.0万円 | 32.7万円 | 37.3万円 | 42.0万円 | 46.7万円 |
6,000万円 | 20.0万円 | 25.0万円 | 30.0万円 | 35.0万円 | 40.0万円 | 45.0万円 | 50.0万円 |
つまり、
リースバックの「家賃」は、周辺の家賃相場で決まるのではなく
リースバックの「家賃」は、不動産リースバック業者が設定する「期待利回り」と物件の「買取額(査定額)」によって決まるのです。
不動産リースバックの家賃を下げる方法
方法その1.期待利回りの低い不動産リースバック業者を探す
前述した「不動産リースバックの家賃早見表」を見ていただければ一目瞭然ですが
不動産リースバック業者の設定する「期待利回り」が低ければ低いほど、家賃は安くなる
仕組みになっています。
問題となるのは
不動産リースバック業者は「期待利回り」を公開していない
という点です。
「期待利回り」がわからないのですから、「期待利回り」の低い設定の不動産リースバック業者を見つるためには
複数の不動産リースバック業者から相見積もりを取る
しかありません。
家賃の安い不動産リースバック業者はこちら
方法その2.物件の査定額を下げる
前述した「不動産リースバックの家賃早見表」を見ていただければ一目瞭然ですが
不動産リースバックの持ち家の「買取額(査定額)」が低ければ低いほど、家賃は安くなる
という関係にあります。
上げることはできませんが、下げることはできます。
物件の買取査定額が2,400万円と提示された場合、期待利回り:8%の不動産リースバック業者の場合、家賃は下記になります。
- 家賃(リース料) = 物件の買取額:2,400万円 × 期待利回り:8% / 12カ月 = 16万円
「月16万円も払えない」
「2,400万円も必要でない」
という場合には
不動産リースバック業者に「1,200万円で買い取ってもらえますか?」と買取額を安く提示することもできます。
買取額が2,400万円から1,200万円に下げられれば
- 家賃(リース料) = 物件の買取額:1,200万円 × 期待利回り:8% / 12カ月 = 8万円
家賃も半額の8万円になり、払い続けられる範囲になるのです。
注意点
将来的な買戻し(再購入)を考えていない場合、もしくは将来的な退去を計画している場合は、あえて買取額を下げるよりも、家賃が高いままの方がお得になるケースがあります。
買取額が2,400万円を1,200万円に下げた結果、家賃が16万円から8万円に下がるケースでは
- 150カ月(12年6カ月)以上住めば、お得になる
- 150カ月(12年6カ月)未満で退去した場合、損をする
ことになります。
不動産リースバックの家賃に関するよくある質問
「期待利回り」って、同じ不動産リースバック業者でも地域によって異なるのですか?
通常の賃貸物件の場合
- 空室リスクが高い地方 → 期待利回りが高い
- 空室リスクが低い都心 → 期待利回りが低い
という関係にあります。
しかし、不動産リースバックの場合
「空室リスク」がはじめからありません。借りる人は決まっているのが不動産リースバックです。
そのため、
「期待利回り」って、同じ不動産リースバック業者でもサービスによって異なるのですか?
- 普通賃貸借契約で、何十年も住むことができるリースバック商品
- 定期賃貸借契約で、延長不可で住める年数が決まっているリースバック商品
があった場合に
- 前者 → 期待利回りが高い
- 後者 → 期待利回りが低い
設定になります。
なぜかというと、不動産リースバック業者は、早めに退去してもらって、土地として転売をした方が利益が出やすいからです。
簡単に言えば、不動産リースバック業者は
と考えるのです。
リースバックの家賃を払わないとどうなるの?
家賃(リース料)の支払いが滞れば、賃貸契約の契約違反になるので、
家賃滞納をし、電話や督促状を無視して3カ月経過すると不動産リースバック業者側から契約解除や法的措置を行う権利が発生します。
- 「契約解除通知」が内容証明郵便で届く
- 裁判所へ請求の申し立てが行われる
- 自主的に退去
- 自主退去しなければ強制執行手続き
- 自主退去しなければ裁判所による強制退去
となり、元持ち家だとしても、退去しなければならなくなります。
リースバックの初回の家賃は何カ月分ですか?
これは不動産リースバック業者によって異なりますが
- 2カ月分
- 3カ月分
の家賃を前払い家賃として、あらかじめ買取額から差し引いて、買取額を支払う不動産リースバック業者が多いです。
リースバックで持ち家を借りる場合も、保証人は必要ですか?
通常の賃貸物件と同様に「保証会社」を入れることが一般的です。
保証料は、家賃に含まれるケースもあれば、家賃とは別に請求されるケースもあります。
保証料は
- 家賃の50%~100%が相場
であり、更新時に更新料が発生します。
リースバックで元持ち家を買い戻した場合、家賃は不要になりますか?
不要になります。
「買戻し(再購入)」をするということは、所有権は不動産リースバック業者から買い戻した方に移るので、持ち家となり、家賃は不要になります。
「不動産リースバックの家賃相場を教えてください。」
「不動産リースバックの家賃の計算方法はありますか?」