マンションは部屋だけ・土地だけを担保に入れられない|区分所有法22条の分離処分禁止と、建物の登記が土地に効く登記法73条

マンションを担保に入れると専有部分と敷地利用権は分けて処分できない。区分所有法22条と不動産登記法73条を2つの枠で並べたアイキャッチ

分譲マンションの一室を担保に入れようとすると、戸建てとは違う制約が出てきます。専有部分(部屋)と敷地利用権(土地の持分)を切り離して担保に入れることができないからです。これは金融機関の方針ではなく、建物の区分所有等に関する法律が定めている制限です。登記の形も戸建てと違い、建物に付けた抵当権が土地にも効く仕組みになっています。2026年10月16日に、区分所有法と不動産登記法の条文をe-Gov法令検索で確かめました。

先に結論

区分所有法22条1項が、専有部分と敷地利用権の分離処分を禁じています。規約に別段の定めがあるときだけ例外です。

敷地権の登記がある区分建物では、建物に付けた抵当権が土地の敷地権にも効きます(不動産登記法73条1項)。土地だけに別の抵当権を付けることはできません。

分離処分の禁止に反する処分は、善意の相手方には無効を主張できません(区分所有法23条)。ただし分離処分できない旨の登記があれば、その限りではありません。

敷地利用権とは何か

区分所有法2条6項は「敷地利用権」を、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利と定義しています。所有権であることが多いのですが、借地権(賃借権や地上権)であることもあります。分譲マンションを買うと、部屋そのものと、この敷地利用権の持分をセットで取得します。

そのうえで22条1項は、敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者はその有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない、と定めています。ただし書きで「規約に別段の定めがあるときは、この限りでない」と続きます。

e-Gov法令検索の画面。建物の区分所有等に関する法律の第22条(分離処分の禁止)から第24条までの条文が表示されている
e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」第22条(2026年10月16日取得)

22条2項は、1人が複数の専有部分を持つ場合の敷地利用権の割合について、14条1項から3項までに定める割合によると定めています。こちらも規約で異なる割合を定めればその割合が優先します。3項では、専有部分の全部を1人が所有していて敷地利用権が単独所有の場合にも、同じ規律を準用すると定めています。

登記の形が、担保の設定方法を決めている

分離処分ができないという実体法の建前を、登記の側で支えているのが不動産登記法73条です。同条1項は、敷地権付き区分建物についての所有権または担保権に係る権利に関する登記は、敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する、としています。

つまり、建物の登記簿に抵当権を設定すれば、それが土地の持分にも及ぶという扱いです。戸建てのように土地と建物へ別々に抵当権を設定する必要がありません。

e-Gov法令検索の画面。不動産登記法の第73条(敷地権付き区分建物に関する登記等)の第1項から第3項までが表示されている
e-Gov法令検索「不動産登記法」第73条(2026年10月16日取得)
戸建てと敷地権付き区分建物で、担保設定の形がどう違うか
項目 戸建て(土地+建物) 敷地権付き区分建物
抵当権の設定先 土地と建物にそれぞれ設定する 建物に設定すれば土地の敷地権にも効く
土地だけを担保にする できる できない(登記法73条2項)
建物だけを担保にする できる できない(登記法73条3項)
土地だけ・建物だけを売る できる 分離処分禁止(区分所有法22条1項)
法定地上権の問題 土地だけに抵当権を付けると生じうる 分離できないため、原則として問題にならない

73条のただし書きが効く場面

73条には細かい例外が並んでいます。読みどころは「敷地権の登記をする前か後か」と「登記原因が敷地権の発生前か後か」という2つの軸です。

73条1項が例外として挙げている登記

敷地権の登記をする前に登記されたもの区分建物についての所有権または担保権に係る権利に関する登記で、敷地権の登記より前に入っていたもの。ただし担保権については、同じ目的・受付年月日・受付番号・登記原因の登記が土地側にもある場合を除く
敷地権の登記後に入った仮登記で、原因が敷地権発生前のもの所有権に係る仮登記が該当する
敷地権の登記後に入った質権・抵当権で、原因が敷地権発生前のもの登記の時点ではなく、登記原因が生じた時点で判断する
敷地権の登記後に入り、原因も敷地権発生後のものただし分離処分禁止の場合は除かれる

2項と3項は、裏側から同じことを定めています。敷地権である旨の登記をした土地には敷地権の移転登記や敷地権を目的とする担保権の登記ができない(2項)。敷地権付き区分建物には、建物のみの所有権移転を原因とする登記や、建物のみを目的とする担保権の登記ができない(3項)。いずれもただし書きで、分離処分禁止の場合を除いた一定の場合が外されています。

なぜ分けられない仕組みにしたのか

この制限は、区分所有建物という所有形態そのものの事情から来ています。マンションの一室は、建物の中の一部分でありながら独立した所有権の対象になります。しかしその部屋は、土地の上に建つ建物の一部である以上、土地を使う権利がなければ存続できません。部屋だけが売られて土地の持分が別の人の手に渡ると、部屋の所有者は敷地を使う根拠を失います。

戸建てなら、土地と建物の所有者が分かれても、法定地上権や賃借権で建物の存続を支える仕組みが用意されています。これに対して区分所有建物は、1棟の中に多数の専有部分があり、敷地の持分も細かく分かれます。個々の部屋ごとに土地との関係を調整していては収拾がつきません。そこで最初から分離できない形に固めたのが22条です。

担保の観点から見ると、この制限は貸し手にとって有利に働きます。建物に設定した抵当権が土地の持分まで押さえるため、競売になったときに「建物は押さえたが土地は別の債権者のものだった」という事態が起きません。戸建てで土地と建物の双方に抵当権を設定するのは、まさにこの事態を避けるためですが、区分建物ではその手間が制度の側で省かれています。

分離処分の禁止に反したらどうなるか

区分所有法23条は、22条1項本文に違反する専有部分または敷地利用権の処分について、その無効を善意の相手方に主張することができない、としています。ただし、不動産登記法の定めるところにより分離して処分することができない専有部分および敷地利用権であることを登記した後にその処分がされたときは、この限りでないと続きます。

実務では、敷地権である旨の登記がされている物件がほとんどです。その場合、相手方は登記を見れば分離処分できないと分かるため、善意とは言えなくなります。結果として、分離処分は無効のまま扱われることになります。

登記簿の「表題部」に敷地権の表示があるかを先に見る。あれば、建物だけ・土地だけという担保設定はできない

敷地権の登記が無い古い物件では、話が変わる。分譲時期によっては土地と建物が別々に登記されたままのことがあり、その場合は土地の持分にも別に抵当権を設定する

24条は、22条1項本文の場合には民法255条(共有者の一人が持分を放棄したときなどに持分が他の共有者に帰属する規定)を敷地利用権に適用しないと定めている

担保に入れるときに確かめる順番

1. 敷地権の有無

登記事項証明書の表題部に「敷地権の表示」があるかを見る。あれば建物の登記だけで土地に効く

2. 敷地利用権の種類

所有権か借地権か。借地権なら地主の承諾が別に要る場面がある

3. 規約の別段の定め

22条1項ただし書きの定めがあるか。管理規約を取り寄せて確かめる

4. 既存の登記

敷地権の登記前に入った担保権が残っていないか。73条1項1号の例外に当たる

敷地権がある物件は、担保設定の手続き自体は戸建てより単純です。設定する不動産が1つで済むため、登記の件数が減ります。一方で、土地の持分だけを別の債権者の担保に回すといった柔軟な使い方はできません。複数の金融機関から順位を分けて借りたい場合は、同じ建物に順位を付けていく形になります。

順位の付け方については第二抵当権(2番抵当)とは?、登記簿の読み方は登記事項証明書の読み方にまとめています。土地だけに抵当権を設定した場合に生じる法定地上権は土地だけを担保に入れるとどうなる?で扱っています。

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