根抵当権の元本はいつ確定する?民法398条の20の4つの事由と、確定後に使える極度額の減額請求・消滅請求

紺色の背景に、根抵当権の元本確定という見出しと、民法398条の20・21・22の3つの条文をカードで並べたアイキャッチ

根抵当権は、極度額の枠の中で借入れと返済を繰り返せる担保です。この枠が閉じて、担保する元本がそのとき存在する債権に固定されることを「元本の確定」といいます。確定の事由は1か所にまとまっておらず、民法398条の20が挙げる4つの場合のほか、398条の19の確定請求と398条の6の確定期日という3系統に分かれています。そして確定したあとに初めて、設定者の側から極度額を減らしたり根抵当権を消したりできるようになります。条文をそのまま並べます。

先に結論
  • 民法398条の20が挙げる確定事由は4つ。競売・担保不動産収益執行・物上代位の差押えの申立て、滞納処分による差押え、他からの競売や差押えを知って2週間、債務者または設定者の破産手続開始決定。
  • 3号の競売手続の開始や差押え、4号の破産手続開始決定の効力が消滅したときは、確定しなかったものとみなされる(同条2項)。
  • これとは別に、設定者は設定から3年を経過すれば確定を請求でき、請求から2週間で確定する(398条の19第1項)。根抵当権者はいつでも請求でき、請求の時に確定する(同条2項)。
  • 確定期日を定めた場合、その期日は定め・変更した日から5年以内でなければならない(398条の6第3項)。
  • 確定後、設定者は極度額を現に存する債務の額+以後2年間の利息等まで減らすよう請求できる(398条の21第1項)。
  • 現債務が極度額を超えているとき、物上保証人や第三取得者は極度額相当額を払渡しまたは供託して根抵当権の消滅を請求できる(398条の22第1項)。

「確定」すると、枠が閉じて普通の抵当権に近づく

根抵当権は、極度額という上限の中で、将来発生する不特定の債権をまとめて担保します。元本が確定すると、担保される元本はその時点の債権に固定され、以後に新しく発生する債権は担保されなくなります。枠として使い続けることができなくなるのが、確定のいちばん大きな効果です。

いっぽうで、確定して初めて使える手段もあります。極度額の減額請求と根抵当権の消滅請求は、どちらも条文が「元本の確定後においては」と書いています。枠が開いているうちは、設定者の側から枠を縮める道がないという構造になっています。根抵当権そのものの性質は根抵当権とはで整理しています。

e-Gov法令検索の民法のページ。現在施行として令和8年6月24日施行と表示され、目次が並んでいる
e-Gov法令検索の民法。この記事で引用している条文は、現在施行とされている令和8年6月24日施行版による。

398条の20が挙げる4つの場合

条文は「次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する」として、4つの号を並べています。いずれも、根抵当権者か債務者・設定者の側で回収や倒産の手続が動いた場面です。

民法398条の20第1項が定める元本の確定事由
号 条文が書いていること 注意点
第1号 根抵当権者が抵当不動産について競売もしくは担保不動産収益執行、または372条が準用する304条の規定による差押えを申し立てたとき ただし、競売手続もしくは担保不動産収益執行手続の開始、または差押えがあったときに限る
第2号 根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき 申立てではなく差押えをしたとき
第3号 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始または滞納処分による差押えがあったことを知った時から2週間を経過したとき 他人が動かした手続でも、知ってから2週間で確定する
第4号 債務者または根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき 債務者と設定者が別人でも、どちらかで足りる

第1号には「ただし」が付いています。申立てをしただけでは足りず、手続の開始または差押えが実際にあったときに限ると書かれています。申立てが取り下げられたり却下されたりした場合は、この号では確定しません。

いったん確定しても、取り消される場合がある

398条の20第2項は、第3号の競売手続の開始もしくは差押え、または第4号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は確定しなかったものとみなすと定めています。ただし同項ただし書は、元本が確定したものとしてその根抵当権またはこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでないとしています。破産手続開始決定が取り消されれば枠は戻るが、その間に確定を前提に権利を取得した人がいれば戻らない、という書き分けです。

確定事由は398条の20だけではない

条文の並びとして398条の20が「確定事由」と題されているため見落としやすいのですが、確定する場面はほかにもあります。借り手の側から動かせるのは、むしろそちらです。

398条の20以外で元本が確定する場面
条文 誰が動かすか いつ確定するか
398条の19第1項 根抵当権設定者 設定の時から3年を経過していることが条件。請求の時から2週間を経過することによって確定する
398条の19第2項 根抵当権者 いつでも請求でき、請求の時に確定する
398条の6第1項 当事者の合意 あらかじめ定めた確定すべき期日の到来で確定する

確定期日には上限があります。398条の6第3項は、その期日を「これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない」としています。さらに同条4項は、期日の変更について変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本はその変更前の期日に確定すると定めています。合意だけして登記を忘れると、延ばしたはずの期日が来て枠が閉じるという仕組みです。

設定者からの確定請求は3年という待ち時間がある一方、根抵当権者からの請求には待ち時間がありません。同じ「請求」でも、効力が生じるまでの時間も2週間と即時で違います。元本確定請求と抹消の関係は根抵当権の抹消はどうする?にまとめています。

確定後に使える①極度額の減額請求

398条の21第1項は、元本の確定後において、根抵当権設定者が極度額の減額を請求できると定めています。減らせる先は条文に書かれており、現に存する債務の額と、以後2年間に生ずべき利息その他の定期金および債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額です。

減額請求で極度額がどこまで下がるか

① 現債務元本確定の時点で現に存在している債務の額。確定しているので、これ以上は増えない。
② 2年分の利息等以後2年間に生ずべき利息その他の定期金。
③ 損害賠償債務の不履行による損害賠償の額。
合計まで減額①+②+③の額に減額することを請求できる。極度額がこれより大きければ、差は空枠として残っていたことになる。

同条2項は、398条の16の登記(共同根抵当権の登記)がされている根抵当権の極度額の減額については、そのうちの一個の不動産について請求すれば足りるとしています。複数の不動産に共同で設定されていても、請求は1回で済みます。極度額の変更そのものの手続は根抵当権の極度額は変えられる?で条文ごとに分けています。

確定後に使える②根抵当権の消滅請求

398条の22第1項は、元本の確定後において現に存する債務の額が極度額を超えるときに使える手段です。条文が挙げている請求権者は限定されています。

398条の22で消滅請求ができる人

物上保証人

他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者。自分の債務ではないのに担保を提供している立場。

第三取得者など

抵当不動産について所有権、地上権、永小作権、または第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者。

条文はこの2種類を挙げている。債務者本人は含まれていない。

方法は、その極度額に相当する金額を払い渡すか供託することです。条文は「この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する」と続けています。極度額を超える部分の債務が残っていても、極度額ぶんを払えば担保は外れる、という整理です。

債務者本人がこの条文を使えない点は重要です。自分の借金のために自分の不動産へ設定した根抵当権は、この方法では消せません。消したいなら債務を完済したうえで、元本確定請求と抹消登記の手順を踏むことになります。

登記はどう動くか

元本の確定は、当事者の間では条文のとおりに効力が生じますが、第三者に示すには登記が要ります。法務局は不動産登記の申請書様式を公表しており、申請は書面申請とオンライン申請の2つがあると案内しています。

法務局の不動産登記の申請書様式についてのページ。書面申請とオンライン申請の説明と、添付情報は原本の添付が原則という注意事項が表示されている
法務局「不動産登記の申請書様式について」。登記申請書の様式のうち主なものが掲示されている(更新日2026年1月7日)。

添付書面については、原本の添付が原則で、住民票の写しなどもその証明書の原本を添付する必要がある(コピーは不可)と書かれています。原本を手元に残したい場合は、コピーに「原本に相違ありません。」と記載して署名押印したものを添えて原本還付を請求する方法が案内されています。

よくある質問

根抵当権の元本が確定すると借りられなくなりますか

確定した元本は、その時点で存在する債権に固定されます。以後に新しく発生する債権は、その根抵当権では担保されません。枠として使い続けることはできなくなります。

破産したら必ず確定しますか

民法398条の20第1項第4号は、債務者または根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたときを確定事由としています。ただし同条2項により、その決定の効力が消滅したときは確定しなかったものとみなされます。

設定者からいつでも確定を請求できますか

できません。398条の19第1項は、設定の時から3年を経過したときに請求できるとしており、確定するのは請求の時から2週間を経過したときです。根抵当権者の側は同条2項でいつでも請求でき、請求の時に確定します。

極度額はどこまで減らせますか

現に存する債務の額に、以後2年間に生ずべき利息その他の定期金と、債務の不履行による損害賠償の額を加えた額までです(398条の21第1項)。

債務者本人は消滅請求できますか

できません。398条の22第1項が挙げているのは、他人の債務を担保するため根抵当権を設定した者と、抵当不動産について所有権・地上権・永小作権・対抗できる賃借権を取得した第三者です。

出典

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