共有名義の不動産は担保に入れられる?同意の要否と3つの選択肢

共有名義の不動産を担保に入れられるかを示すアイキャッチ。同意の要否と3つの選択肢

相続した実家や、夫婦で購入した自宅など、共有名義の不動産を担保にできるかという相談は少なくありません。結論から言うと、不動産全体に抵当権を設定するには他の共有者の同意が必要です。民法第251条第1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を加えることができない」と定めており、抵当権の設定は共有物の処分にあたると解されているためです。

先に確認する3点

①登記事項証明書で共有者と持分割合を確認する、②全体を担保にするなら全共有者の同意が取れるかを確認する、③取れない場合は自分の持分だけを担保にする方法と、持分を買い取って単独名義にする方法を比較する。

共有不動産を担保に入れる3つの方法の全体像。不動産全体に抵当権、自分の持分だけに抵当権、持分を買い取って単独名義にする
共有不動産を担保に入れるときの3つの道|全体像

民法が定めている共有物のルール

共有不動産の扱いは、行為の種類によって必要な同意の範囲が変わります。民法の該当条文を整理すると次のとおりです。

民法第249条から第252条までが定める共有物のルールの比較軸。使用、持分の推定、変更、所在不明共有者、管理
共有物のルール|条文で決まっていること
条文 定めている内容 担保設定への影響
第249条第1項 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる 住んでいる人だけの不動産ではない
第250条 各共有者の持分は、相等しいものと推定する 実際の割合は登記で確認する必要がある
第251条第1項 他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない 全体への抵当権設定には同意が必要と解される
第251条第2項 共有者が他の共有者を知ることができず、または所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の同意を得て変更を加えることができる旨の裁判をすることができる 連絡が取れない共有者がいる場合の手続がある
第252条第1項 管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する 賃貸などの管理行為は全員一致でなくてよい

注意したいのは、第250条が「持分は相等しいものと推定する」と定めている点です。あくまで推定であり、実際の持分割合は登記事項証明書で確認します。相続で複数回にわたって名義が移っている場合、思っていた割合と違うことがあります。話を進める前に登記を取り寄せてください。

e-Gov法令検索の民法のページ。令和8年6月24日施行が現在施行と表示されている
条文はe-Gov法令検索で確認できます。施行日ごとに内容が異なるため、現在施行の版を参照してください。出典:e-Gov法令検索「民法」

選択肢1:不動産全体に抵当権を設定する

もっとも借入額を大きくできる方法です。担保になるのが不動産の価値の全部なので、金融機関の評価額も高くなります。ただし、共有者全員の同意と、全員の実印・印鑑証明書が必要になるのが実務です。金融機関によっては、共有者全員を連帯保証人や連帯債務者として求めることもあります。

同意を求めるときは、借入の目的、金額、返済計画、返済できなかった場合に何が起きるかを共有者に説明してください。共有者にとっては、自分が借りるわけではないのに、自分の持分を失うリスクを負う話です。書面で条件を示し、判断の時間を取るほうが結果的に早く進みます。

共有者の所在が分からない場合、民法第251条第2項は、裁判所が「当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判」をすることができると定めています。ただしこれは裁判所の手続であり、時間も費用もかかります。急ぎの資金需要には向きません。

選択肢2:自分の持分だけに抵当権を設定する

自己の持分の処分は単独でできると解されているため、他の共有者の同意なしに抵当権を設定できる可能性があります。ただし実務上の制約は大きいです。

項目 持分だけを担保にする場合
他の共有者の同意 不要と解されている
担保評価 持分相当まで下がる。さらに換価しにくさを織り込んで評価が下がることが多い
取り扱う金融機関 限られる。持分担保を扱わない金融機関もある
金利 単独名義の場合より高くなりやすい
返済できなかった場合 持分が競売にかかり、第三者が共有者になる可能性がある

最後の行が重要です。持分が第三者に渡ると、その後の共有関係は非常に扱いにくくなります。他の共有者との関係を壊さないためにも、返済できなくなったときに何が起きるかを先に把握してから決めてください。

選択肢3:持分を買い取って単独名義にする

他の共有者から持分を買い取り、単独名義にしてから担保に入れる方法です。手順は増えますが、その後の資金調達も売却も自由になります。相続で共有になった実家を、住み続ける相続人が引き取るケースでよく使われます。

手順 内容 確認すること
1 登記事項証明書で共有者と持分を確認 相続登記が済んでいるか。未了なら先に登記が必要
2 持分の売買価格を決める 時価と大きく離れると贈与とみなされる可能性がある
3 買取資金を用意する 買取資金自体をローンで賄えるか金融機関に確認
4 持分移転登記 登録免許税・司法書士報酬が発生する
5 単独名義で担保設定 評価額が上がり、条件を交渉しやすくなる

持分の売買価格を安く設定すると、差額が贈与とみなされて課税されることがあります。税務の扱いは個別事情によるため、金額を決める前に税理士へ相談してください。

相続で共有になっている場合の注意点

相続した不動産では、そもそも相続登記が済んでいないことがあります。名義が被相続人のままだと、担保設定の前に相続登記が必要です。相続人が多い、疎遠、海外在住といった事情があると、同意を集める難度は一気に上がります。

また、遺産分割協議が終わっていない段階では、法定相続分での共有状態として扱われます。誰がどの持分を持つかが確定していないため、金融機関は慎重になります。担保に入れる話より先に、相続登記と遺産分割を片づけるほうが早いケースが多いのが実情です。手順は相続不動産で担保ローンを検討する手順で整理しています。

返済が滞ったときの流れや、担保割れの扱いについては抵当権の基礎、完済後の手続は抵当権抹消の必要書類・費用もあわせて確認してください。

よくある質問

夫婦の共有名義でも配偶者の同意は必要ですか

必要です。持分割合にかかわらず、不動産全体に抵当権を設定するのは共有物への変更にあたると解されています。配偶者が持分を1割しか持っていない場合でも、全体を担保にするなら同意を求められます。

共有者の1人が反対しています。過半数で決められませんか

民法第252条第1項が持分の価格の過半数で決めると定めているのは「管理に関する事項」で、共有物への変更は含まれません。担保設定は管理行為ではないと解されているため、過半数では決められないのが原則です。

持分だけを担保にしたことは他の共有者に知られますか

抵当権は登記されるため、登記事項証明書を取得すれば誰でも確認できます。黙って進めても、あとから分かる前提で考えてください。

まとめ

共有名義の不動産は、全体を担保に入れるには他の共有者の同意が必要です。民法第251条第1項が、他の共有者の同意なく共有物に変更を加えることを禁じており、抵当権の設定は共有物の処分にあたると解されているためです。同意が得られない場合は、自分の持分だけを担保にする方法がありますが、評価額が下がり、取り扱う金融機関も限られます。

長期的に扱いやすいのは、持分を買い取って単独名義にしてから担保に入れる方法です。相続で共有になっている場合は、相続登記と遺産分割を先に済ませてください。条文はe-Gov法令検索で現在施行の版を確認し、個別の可否は金融機関と司法書士、税務は税理士に相談することをおすすめします。

参考にした一次情報

  • e-Gov法令検索「民法」(第249条 共有物の使用、第250条 共有持分の割合の推定、第251条 共有物の変更、第252条 共有物の管理)

この記事は条文と一般的な実務の説明です。抵当権設定が「変更」にあたるかどうかの解釈や、持分のみの担保取扱いの可否は、個別の事情と金融機関の判断によります。実行前に専門家へご相談ください。

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